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盆 (肆)
お盆に家族を連れて実家に帰省。
帰省した翌日家族を連れて墓参りに出かけた。
墓参りを終えフト周りを見渡すと幼い息子が見当たらない。
迷子の文字が頭に浮かぶ。
今年はうちの部落と言うか、俺の息子かよ!
墓が山頂の本堂から村中を見渡せる高くて広い山の中にある事もあって、昔、高度成長期の頃から毎年村を構成する部落の子供、大抵都会に出て行き帰省して来た親に連れられて来た子が迷子になり捜索が行われる。
もう村の風物と言っても好いかも知れない。
村の消防団や青年団を始め村中の大人が参加して捜索が行われた。
日が暮れ夜になって捜索は一時中断され明日の早朝から再開される事になり、私達家族も実家の兄や同じように帰省してきていた兄弟に促され帰宅。
今帰宅したら実家の仏間で行方不明の息子が寝ていた。
え!?
息子を揺り起こしどうやって帰って来たのか問い質す。
息子は仏間に飾られている息子が生まれる前に亡くなった母の写真を指差し、「このお婆ちゃんと一緒に帰って来た」と答えた。




