69/531
孝行
昔から僕は曾爺ちゃん子だったらしい。
らしいって言うのは生まれたばかりでその頃の事を覚えていないから。
小学校高学年になっても曾爺ちゃん子というのは変わらないけど。
最近その曾爺ちゃんの元気が無い。
20歳の時結婚して70年以上共に生きてきた曾婆ちゃんが亡くなってから、「死にたい、早く婆さんの下に行きたい」と呟くようになる。
僕はお父さんや爺ちゃん等と相談して旅行に連れてきた。
眺めの良い山頂のお寺を目指して長い階段を上る。
後ろから曾爺ちゃんの背中を押してあげた。
でも、お寺を参拝しても「死にたい」って呟く。
だから今僕は決心した。
長い階段を下りるとき僕は曾爺ちゃんの背中を押した。




