522話 これから起きる事
親父が死んだ、新型肺炎で。
前に風邪ひいたのは何時だったかな? って言うほど健康だった親父が咳込み頭痛がすると言い、念の為病院でPCR検査をしたら新型肺炎に罹患していた。
軽症だからと検査した医師に自宅で療養するように指示される。
帰宅した夜、容態が悪化。
「苦しい苦しい、息ができない」と息苦しさを訴え、顔が青黒く変色。
救急車を呼んだけど、救急車が来た時にはもう手の施しようが無かった。
新型肺炎で亡くなったのは仕方が無い、でも、病院に収容され医師の手当の末に亡くなったのならば兎も角、何の手当もされずに死んだ事には納得できない。
長年勤めていた会社を定年退職したあと警備員のアルバイトを始め、普段は駐車場の誘導員だったのにオリンピック期間中は競技が行われた沿道に配置され、観戦に来るなと言われているのに観戦に来た人たちにもみくちゃされる。
だから俺は……………………。
俺は昔、大学生の頃、大学を休学してバックパッカーとして世界中を旅する。
そのときある国を旅行中、ある国の一番凶悪なギャング団のボスの息子が敵対する新興のギャングに拉致されそうになっている所に遭遇し、拉致されそうになっていたその青年を助けた。
ボスに感謝され、「この借りは絶対返すだから俺たちの力が必要になったら言ってくれ」と言われる。
俺はギャング団のボスに2つの頼み事をした。
政治家がオリンピックの開催を決めなければ、親父はあんな場所に行かなくて済んだんだ。
開催されていても観戦するなと言われていた事を皆が皆守っていれば、親父は群衆にもみくちゃにされる事は無かった筈。
だから…………、これからギャング団が引き起こすであろう事件を俺は今から楽しみにしているのさ。




