520話 侵略者☓ 強盗団○
私だけに忠誠を誓う組織の部下が報告して来た。
「隣国国境沿いに配置されている部隊の1つで、僅かな食料の配分を巡り小隊規模の銃撃戦が起きました」
不味いは、このままだと食料の取り合いで内戦になってしまう。
だからその部隊に行ってこんな感じでちょっとアジってやった。
「腹一杯食いたいかー!」
国境線を指差しながら続ける。
「あれを越えれば腹一杯食えるぞ!」
私としては一部の不満分子を隣国に集団亡命させれば良いやくらいの気持ちだったのに、私の話を聞いた全将兵が国境線に殺到し越えた。
国境を越えた将兵は農作物や隣国人のペットの犬や猫だけで無く、隣国人にまで襲いかかり腹に収める。
「隣国に行けば腹一杯食える」
と言う話しはまたたくまに我が国中に広まった。
その結果。
人民だけで無く、昔、お祖父様が建国した当初から私たち一家に絶対的忠誠を示して来た精鋭部隊までが、その任務を破棄し隣国国境に殺到。
私は呆然と、国境を越え全ての食い物を腹に収めながら進軍する将兵と人民の背中を見つめていた。
その私の頭にある考えが浮かんだ。
今こそ進軍する将兵と人民が無視している隣国人の財産を掠めとる好機。
私は私に忠誠を誓う組織の部下たちと共に国境を越えた。




