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485話 「もう、遅いわ!」


私は県庁に陳情に来ている。


昔、父の跡を継いで秒院長になってから何度も何度も来て県の担当者に頭を下げた。


「うちの病院は、あの過疎が進む地域のたった1つの総合病院なんです。


山奥にあるため医師や看護師を雇用する際、給料に色をつけなくてはならないのです。


そのためベッドや呼吸器等の医療器具を増やす事が出来ません。


補助金を支給して頂けませんか?


お願いします」


また私は頭を下げる。


「私達も何とかしたいとは思ってます。


ただ、新型コロナの蔓延で県内全ての病院から陳情されている現状ですので、貴方のところだけ援助する訳にはいかないのです」


「何とかお願いします。


私は病院を畳む事も視野に入れてます。


畳まなくても良いように何とぞ宜しくお願いします」


「病院が無くなるのは私共も不味い事態になると思いますから、上司と相談のうえお答えします。


ですからそれまでお待ちください」


返事を聞き私は肩を落として県庁を後にした。


数ヵ月後。


私と病院の職員全員は私の執務室とその隣の会議室にいた。


執務室と会議室の扉の後ろにバリケードを築いて。


バリケードが崩れないように押さえている私に事務長から声が掛けられる。


「院長! 県庁から電話が入ってます」


事務長から受話器を受け取った。


「はい、私です」


「〇〇病院の院長さん。


喜んでください。


補助金が出ます」


私は息を吸い込み怒鳴る。


「もう、遅いわ!」


「え?」


「此れを聞け」


持っていた受話器をバリケードで塞いでいる扉に向ける。


ズキューン! ズキューン!


「死ねー!」


ズキューン!


「テメエこそクタバレ!」


扉の向こうからは銃声や罵声が響いて来ている。


「分かったか?」


「な、何が起きているのですか?」


「コロナに感染した〇〇組の組長と、インフルエンザに感染した◆◆会の会長が殆ど同時に救急車で運び込まれたんだ!


病院に最後のベッドと呼吸器を巡り一緒に来た子分達が睨みあいになった。


直ぐ睨みあいは殴りあいになり、今は殺しあいになっているんだ。


もう、病院はお仕舞いだよ」


「………………………………」




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