470話 誤魔化し
僕が執務室で東の島国の同胞から送って貰ったAVを鑑賞していた時、ノックもせずに血相を変えた妹ちゃんが執務室に入って来た。
妹ちゃんは僕が見ていたAVにチラッと目をやったが直ぐに僕の方を見て、手に持っていた書類の束を突きつける。
「ワワワ、な、な、なんだいその書類は?」
「私直属の諜報機関から上がって来た報告書よ。
この報告書によると、地方だけで無く首都でも政府に不満を持つ者が増えているわ」
「フン、不満分子は強制再教育所に送れば良いだけだろ」
「なに言ってるの!
昔、お爺様が生きていらしゃた時から、地方で反乱が起きても首都の市民がそれに同調せず私達を支持してくれていれば、時間は係っても反乱は鎮圧できると言われていたじゃない。
首都の市民が私達を支持するのを止めたらお仕舞いよ!」
「そ、そうだったね。
でも、どうすれば良いと思う?」
「そうね、今度の軍事バレード、真夜中に開催しましょう」
「え? 真夜中にかい?」
「そう、真夜中なら色々誤魔化せるから」
真夜中、飾り立てられた会場となった大通で大勢の市民が見守る中、軍事バレードが行われている。
戦車や自走砲、自走発射台に乗せられた新型核弾頭搭載ロケットが次々に市民の前を通りすぎ、軍靴の音を響かせて沢山の兵士が部隊毎に行進。
電飾で飾り立てられたレシプロ機の編隊が行進する兵士達の頭上を次々と飛び去って行く。
行進が終わり兵士達が市民の前に整列した。
市民や兵士に向けて、ある国の独裁者である僕が演説を始める。
市民に向けて感謝や謝罪の言葉を口にした。
市民や兵士は僕の演説に感激し涙を流している。
今僕は執務室で、僕の影武者を勤める役者の演説をテレビの画面越しに眺めていた。




