469話 特別
昔子供の頃から僕は特別な存在なんだと何の根拠も無いのに思い込んでいた。
僕が絶体絶命のピンチになったとき、エイリアンだか未来人だか知らないけど助けて貰えるんだと思い込む。
とは言ってもずば抜けて頭が良い訳でも高貴な家に生まれた訳でも無いんだけどね。
何となく思い込んでいた。
そりゃあチョット考えればそんな事があるわけ無いって分かるよ。
だって、小学校に入学した時から高校を卒業するまで虐められはしなかったけど、クラスカーストの下の方が居場所だったし大学も三流、大学を卒業して就職できた会社も給料は安かったけど定時で帰宅できた普通の会社。
平々凡々な男の頭に浮かんだ夢か願望なんだよ。
そんな可もなく付加もない生活に変化があったのは、西の大陸で発生した致死率が非常に高い未知の伝染病が全世界に蔓延した時。
僕は数少ない抗体持ちだったのか感染せず、身体中が気持ち悪い疣に覆われ死んでいく両親や友人等を含む人たちを見捨てて、人のいない山奥の廃村に逃げた。
人だけで無く犬や猫に熊や鼠等の動物、鴉や鳩等の鳥類も人間と同じように疣だらけになって死んでいく。
僕はそれらに接触しないように気を付けて生活した。
そんな状況なのに助けは来ないし、エイリアンも未来人も現れない。
やっぱり特別な存在っていうのは僕の勝手な思い込みだったんだろうな。
廃村を渡り歩き人や動物等の死体が転がっていない温泉宿を見つけ終の住みかとし、布団に横たわった僕は目を閉じる。
今、人類でただ一人生き残っていた男が寿命を迎え息をひきとった。




