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462話 幸運
昔、生まれたばかりの私を見た祖父の友人で高名な占い師が、「この子は幸運の持ち主だ」と言ったらしい。
でもその占い師は耄碌していたのだろう。
私の半生は録なものではなかった。
小学校に入学した頃から高校3年の終わりまで虐められ、三流大学を卒業して就職した会社は安月給で朝から晩までこきつかうブラック企業。
将来に夢も希望も無く、早く死にたいという思いだけが募る。
だから自殺を何度か試みたが全て失敗。
首を吊ろうとした時、1回目は紐を結んでいた枝が折れ2回目は紐が切れた。
車の中で練炭自殺を試みた時は、強風で巻き上げられた物が車の窓を突き破り失敗。
高血圧や糖尿病の持病がある私は新型肺炎に罹患したら死ねるかも知れないと思い、今、新型肺炎の重病者が入院している病院や感染者が隔離されているホテル、次々と感染者が見つかる繁華街の飲み屋を梯子しているのに全く感染しない。
私はなんでこんなに運が悪いのだろう?




