435話 手遅れ
昔、未知の伝染病である新型肺炎が全世界で蔓延した。
同じ頃、海の向こうの大国では警察官による黒人射殺を発端とした人種差別に反対する暴動が起きる。
北の大国やヨーロッパの国々でも、反政府暴動や新型肺炎に対する国の取り組み方に反対するデモを発端とした暴動が発生。
西の大国は新型肺炎の出所が西の大国の研究所だと指摘される度に、周辺国と軍事衝突を繰り返す。
東の島国でも新型肺炎警察を名乗る者達による、政府の新型肺炎封じ込めに協力しない人たちへの襲撃事件が次々と起こる。
新型肺炎を封じ込める為に各国政府が行っている、都市封鎖等によるストレスからなのか?
しかし、感染は自己責任だと言い都市封鎖などを行っていない国でも暴動が多発している。
もしかして、新型肺炎の原因ウィルスが関係しているのかも知れない。
だから私は関係性を研究し、原因を突き止めた。
新型肺炎のウィルスは脳にも作用して感染した者達をイライラさせる事を。
全世界の殆んどの人が新型肺炎ウィルスに感染していたのだ。
ただ感染した場所が脳だけだった為に、検査しても陰性だったのだ。
今、白衣を着て力なく地面に座り込んだ男が、核爆発で焼け野原となった大都市を山の上から見下ろしながら、自身の書いた論文を読み上げていた。




