422話 耐えられない
昔僕は引きこもっていた。
父さんの所有する超高層マンションの最上階でゲーム三昧の日々。
あの日も朝からゲームに没頭していたら父のボディーガードが数人現れ、抵抗する暇も与えられずに部屋から連れ出されマンションの屋上にあるヘリポートでヘリコプターに乗せられ、この無人島まで連れてこられる。
ヘリコプターの中でボディーガードの1人に聞かされたのは、未知の伝染病が突然発生したから未知の伝染病の蔓延が下火になるまで念のために無人島で隔離されるとの事だった。
無人島は多忙な父さんが何もしたくなくなった時に過ごす島。
外見は人の手が入っていない無人島のように見えるけど、地下には核シェルターが造られ、数百人の人間が100年以上立て籠る事が出来るだけの食料など必要な物資が蓄えられていた。
核シェルターにあったテレビで外部の様子を見る。
固定されたカメラが映し出しているのは死屍累々の街の中。
あれから10年以上の年月が経つけど迎えは来ない。
今僕は無人島の海岸で自殺する事を考えている。
無人島は海に囲まれ山や湖もある自然溢れる環境だけど、ゲーム機が1台も無いこの島で生活するのは、引きこもり体質の僕にはもう耐えられないんだ。




