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393話 大海原
曾祖父母が昔亡くなるまで住んでいた山の中の家と里山を含む広い土地を、それを所持しながら持て余していた大伯父から、会社でパワハラを受けて対人恐怖症になっていた私は格安で譲ってもらう。
対人恐怖症で人と会いたく無いと言っても都会で暮らしていた私には野生の動物特に熊と「こんにちわ」するのも嫌なので、里山を含む土地を高い塀で囲む。
それらに掛かった費用は、会社と上司を訴えて得た慰謝料を当てた。
住み始めて2年程経ったある朝少し大きめの揺れを身体に感じ、避難しようと家の外に出て私は仰天する。
塀の外、家の周りを取り囲んでいた山々が見当たらず、代わりに大海原が広がっていたからだ。
100メートルくらいの沖を私の背丈くらいある鮫の背鰭と思われる物が横切って行くのが見える。
自分の頬を力一杯殴り、目の前の大海原が夢で無い事を確認。
今私はこれで金輪際人と会うことが無いと安堵して海で釣りをしていた。




