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376話 足音
昔入学した隣町の私立中学校で、有名な神社の高名な徐霊師の神主の息子と知り合い友人になった。
その友人が飼っている犬が数匹の子犬を産んだと聞き、以前から犬を飼いたいと思っていた俺は1匹譲ってもらう。
でもその子犬、家に連れて来られた直後からギャンギャンギャンギャン無駄吠えを繰り返した。
友人の飼っている母犬は無駄吠えをしない賢い犬なのに。
それでも家は田んぼに囲まれた1軒家で、俺の部屋があるのは母屋から離れた所に建つプレハブ小屋だったんで子犬を猫可愛がりした。
犬を譲ってもらってから10数年経った今、飼い犬を庭で撫でていたら犬が猛然と誰もいない門の外に吠えかかる。
また何時もの無駄吠えかと思った俺の耳に、「チィ!」という舌打ちと田んぼの外れにある墓地の方へ立ち去って行く足音が聞こえていた。




