昔と今の物語

腹の中の声

昔結婚してくれ結婚してくれとうるさく言い募る同棲相手に辟易し、山奥の温泉に婚前旅行と称して連れ出し途中の山道で絞殺、死体を山の中腹に穴を掘り埋める。

あれから数十年経ち晩酌しながらテレビを見ていたらニュースで、女の死体を埋めた山の中腹が地滑りを起こし大量の土砂が山の裾野を流れる川に流れ込んだと告げていた。

死体が見つかったとは言って無いので一安心して焼酎のお湯割りを呑む。

そうしたら腹の中から殺した女の声で、「やっとあなたと一緒になれたわ」と言う声が聞こえる。

土砂が流れ込んだ川は住んでいる町の中を流れる川の上流にあたり、この町の住民はその川の水を飲んでいる事に今気がついた。