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黒幕
昔、お父ちゃんが子供全員を集めてこう言った。
「私の後を継ぎたい者はいるか?」
「私! やりたい」
私は真っ先に手を上げる。
それなのにお父ちゃんに拒否された。
「女は駄目だ、嘗められる」
そう言って私の次に手を上げた兄ちゃんが三代目の独裁者に選ばれる。
その時はお父ちゃんを恨んだけど、今考えたらそれが良かったんだと理解した。
お父ちゃんが独裁者だったとき、お父ちゃんの妹の旦那だというだけで権力を持っていた糞野郎が私に小言を言って来る。
お前に小言を言われる筋合いは無い。
だいたい時勢を読めず、お父ちゃんが亡くなった後も権力を保持できると思っている馬鹿が何時までものさばっているんじゃないよ。
兄ちゃんが当代の独裁者なんだからね。
だから兄ちゃんに彼奴ウザイって言いつけてやったら、馬鹿と馬鹿の部下達にその家族が全員、処刑されたり強制収容所に収監されたりした。
それで良かったと言うのは、処刑した事に対する怨みが全部兄ちゃんに向かったって事よ。
権力は振りかざしたいけど怨まれるのは御免だからね。
お父ちゃん、ありがと。




