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助平爺
昔中学生の頃から私は此処で釣竿を手にしていた。
崖下の河原で崖に背を預け釣糸を垂らした竿を持ち、対岸の崖の上に生い茂る満開の桜を鑑賞する。
この場所は誰にも教えなかった穴場。
と言っても、釣りの穴場でも桜を鑑賞する穴場でも無い。
背を預けている崖の上には遊歩道があって目を頭上に向けると、近くの中高一貫女子校に通う女子生徒のスカートの中が見える穴場だったんだよ。
それなのに未知の伝染病で沢山の人が亡くなり、遊歩道を歩いている女子生徒の姿は皆無。
今、ミイラ化した老人の死体が釣竿を手に河原に座り崖の上を仰ぎ見ていた。




