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幻聴
ああ、春だ。
季節が廻り新しい春が来た。
南から暖かい風が吹き寄せる。
そう言えば、春になると校庭に子供達の楽しげな声が満ちていたな。
幹のあちらこちらが焼け焦げている桜の古木が昔の事を懐かしげに思い起こしていた。
「キャハハハハ」
今、彼の耳に子供の笑い声が響く。
桜の古木は目を見開き子供の姿を探した。
だが、彼の目に映ったのは焼け野原となった大地だけ。
子供は? 幻聴だったのか?
そうだ、あの時、空に幾つもの太陽が出現したあの日から人類は地上から姿を消したのだったな……………………。




