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ある生物
昔からこの広大な大地に住まう野性動物達は知っていた。
高熱を発し咳き込み息をするのが辛く、年を食った物や体力の無い物から次々と死んでいく病が流行った時は、ある小さな生物を食べれば治る事を。
その小さな生物は繁殖力が弱く極僅かしか生息していない。
だからこの地に住まう野性動物達はその小さな生物を病に罹っている時以外は補食せず、逆にその生物が繁殖地と定めた場所を守り保護する。
今、未知の伝染病の宿主を探しにこの地に分け行ったWHOの職員が、その貴重な小さな生物とその卵を知らずに踏み潰した。




