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月に願う
昔から沢山の野性動物が医学の発展のために捕らわれ、病原菌を感染させられたり変異した部位を見るため解剖されたりしている。
檻に閉じ込められている1匹の猿が窓から見える月を見上げ、遠い故郷のジャングルを思い浮かべた。
そして願う。
食うわけでも無いのに命を奪う者達に同じような死が与えられるようにと。
今、猿の身体に住み着いていた未知の病原菌が、猿を解剖している解剖医の身体の中に入り込んだ。
数ヵ月後、人類は初めて出会った病原菌に次々と感染し、高熱を発し咳き込みながら死んでいった。




