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「オーイ!」
私は1人山の中を彷徨していた。
昔この山で人を殺し深い穴の中に捨てる。
だからこの山には来たくなかったのだが、この山が小学校の遠足の場所に選ばれ、小学校の教員をしている私には拒否する事は出来なかった。
子供達を引率し脱落者が出ないように見守る立場なのに、情けない事に他の先生方や子供達とはぐれ道に迷い、今1人彷徨しているって訳だ。
「オーイ!」
人の声が聞こえた。
助けか?
「オーイ!」
また聞こえた。
私を探しに来てくれた人か?
私は声が聞こえた方に歩み、穴に落ちた。
深い、深い、穴に。
ライターの火で落ちた穴の中を見渡す。
そして理解した。
この穴は昔殺した男を捨てた穴だと言うことに。
私の横に見覚えのある服を纏った骸骨が横たわっている。
穴の中に風が吹き込み、骸骨に空いた2つの眼窩を吹き抜け、その際オーイ! と言う音を周りに響かせた。




