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餓死
昔俺は同棲していた女が交通事故で亡くなったあと、女の連れ子の面倒をみるのが嫌になって育児を放棄して餓死させてしまう。
その罰として禁固刑になり刑務所に収監される。
収監されてから10年あと1年で満期を迎える今、俺は牢のドアをガンガン叩いていた。
「オーイ! 誰かいないのかぁー?」
もう10日以上水だけで過ごしている。
10日以上前、牢の前の通路から看守のものと思われるゴホゴホと咳をする音が聞こえたあと、「ウ…………ウグ、ウグググ」と言う呻き声と共に通路に人が倒れ込む音が聞こえ、その後は物音1つ聞こえなくなった。
「腹減った…………もう……駄目だ……ハァー………………」
全世界で蔓延していた伝染病に対する免疫を持っていた人類最後の1人が、牢の中で餓死した。




