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見捨てられた者
昔ある国から我が国の首都にICBMによる攻撃が行われる可能性を考慮して、核シェルターを建造する計画が持ち上がった。
だが、都民全員を収容できる核シェルターの建造は予算的に不可能と分かり計画倒れになる。
今、秘書が私の下に駆け込んで来て報告した。
「総理! 大変です。
国防軍からの連絡で、ある国が首都に向けて核ミサイルを発射しました」
「都民を避難させろ!」
「何処にですか?
それに時間がありません!
早く核シェルターに向かってください」
私は促されるままに官邸の地下にある核シェルターに向けて走った。
官邸にいた全職員が核シェルターに向けて走る。
運動不足の私を職員達が次々と追い抜いて行く。
どうやら私が最後の1人のようだ。
え!?
核シェルターの扉が閉められようとしている。
「オイ! 待ってくれ! 私がまだ残っているのだぞ!」
無情にも私の鼻先で閉めきられた核シェルターの扉を叩く。
扉を叩く私の耳に凄まじい轟音が響き、背後から眩い光が押し寄せて来た。




