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代償
昔中学生の頃自分の失敗を同級生に擦り付けそれをネタに同級生を虐めた。
あれから50年以上経ち世界的大企業の子会社の専務取締役になったのに、社長に身に覚えのない横領を告発される。
身の潔白を訴えようと親会社の会長に直談判を申し入れたら会って貰える事になり、喜び勇んで東京の親会社に向かった私を待っていたのは、中学生の時虐めた同級生だった。
親会社の会長である元同級生にこう言われる。
「お久しぶり、覚えているかい?
君に中学生の頃虐められていた者だよ。
君が在籍していた会社を吸収したのは君に復讐するためだ。
此れで分かるだろう。
君には自分の身の潔白を証明する手立てが無いのだよ」と。
そして私は横領したとされる金を返還するよう訴えられ、退職金も貰えず会社から放逐された。
それだけで無く孫娘の結婚が破談になり妻に離婚を切り出される。
元同級生が最後に言った言葉が脳裏に浮かぶ。
「虐めを行った君は50年も前の事は覚えていないかも知れないが、虐められた私は50年経った今でも覚えているのだよ、鮮明にね」




