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共に
昔、桜の花が舞う中、訓練中事故死した友の写真と共に、鹿児島から沖縄に向けて神風特別攻撃隊の一員として出撃した。
敵艦を目視したとき上空から敵機が突っ込んで来る。
敵機が放つ銃弾を足に受けながらも機首を上げ体当たりを敢行。
敵はバラシュートで脱出、私は海上に着水する。
足の傷からの出血で意識が朦朧としていた私を沈みゆく乗機の操縦席から引っ張り出したのは、近くにパラシュートで着水した敵のパイロットだった。
今、写真立ての中の友の写真の前に置いたコップに酒を注ぎ語りかける。
「昨日、孫と私をあの時助け出してくれたパイロットの曾孫が結婚したよ。
共に生きる事を選択したらしい」