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変わらない夏


暑い、暑い、扇風機から送られてくる風は濁って生ぬるい。


暑くて眠りに就くことさえでき無い、暑さに耐えきれずに窓を開ける。


心地よい夜風と共に、クラクションやマフラーを改造した車やバイクの轟音が部屋の中に響き渡った。


1階の両親の部屋から父の怒号が響く。


「うるさーーい!!もう我慢ならん!」


「あなた! 何処に行くの? あなた!」


母の声と共に玄関のドアが開け放たれる音が聞こえて来た。


私は母の声を聞き階段を駆け下り玄関から外を見る。


両手に鉄パイプとガソリン缶を持ち、国道の方へ駆けていく父の後ろ姿が見えた。


後を追った私の耳に父の絶叫が響く。


「人の迷惑も考えず、夜な夜な騒音を撒き散らしやがって! これでも食らえーー!!」


父の絶叫の後、ボンと言う音と共に真っ赤な火柱が上がった。


国道に走り出た私の目に、火だるまになって転げ回っている人たちや、燃え上がる車の中から助けを求める人、それに、難を逃れた人たちに笑いながら鉄パイプで殴りかかる父の姿が映る。


父は逮捕されたが、心を病んでいて病院に収容された。


それが10数年昔の夏。


暑い夏の夜と共に、10数年前の昔と変わらず国道を我が物顔で走り回るあいつらが騒音を撒き散らす。


父が病院に収容された時まだ小学生だった弟が今、鉄パイプとガソリン缶を用意している。


あいつらと共に、夏なんて無くなればいいのに。




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