昔と今の物語

脱出

昔、小学生の頃の話だが、俺には宇宙人ってあだ名の親友がいた。

宇宙人ってあだ名は容姿からつけられたものでは無く、宇宙人の親父さんが建築家でＵＦＯのような家を建て住んでいたからだ。

ある日宇宙人とたわい無い事をお喋りしながら学校からの帰宅途中、突然宇宙人が真剣な顔で俺の顔を見つめ、こう言ってくる。

「僕、今日の夜から家族と旅行に行くんだけど、一緒に行かないか？」

「今日の夜？」

「ウン！」

「行きたいけど、無理だよ」

「そうかぁ…………」

「あ！ でも、何処に行くのか分からないけど、お土産ヨロシクね」

「う……うん…………」

あれから50年以上経ったがあのとき一緒に行けばこんな苦労をしなくて済んだのにな、未だに断った事を後悔している。

その日の夕方から世界各地でＵＦＯが目撃され、夜のニュースでも地球から飛び去るＵＦＯの画像が流されていたんだが、その中に宇宙人の家そっくりのＵＦＯも映っていた。

今から思うと地球人に化けて生活していたエイリアン達は皆、翌日核戦争が勃発する事に感づいて地球から脱出して行ったんだろうな。