107/531
棺桶
昔あれが起きたとき私は何もかも放り出して此処に逃げ込んだ。
逃げ込んで扉を閉める。
扉をロックし身体を丸めて頭を抱え床に蹲り衝撃に備える私の耳に、扉が外からドンドンドンドンドンと乱打される音微かに聞こえていた。
突然、大地震が発生したような凄まじい震動が私を襲い、凄まじい轟音が扉越しに鳴り響く。
身体を縮ませてそれらに耐えた。
あれから60年近くの年月が過ぎ私の寿命も今尽きようとしている。
皆を見捨てた私なのに棺桶に入って死ねるなんて何と恵まれている事か、たとえそれが核シェルターという棺桶であったとしても。




