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雨
突然の雨に道行く人たちは皆慌てて道筋の店舗の軒下に駆け込む。
昔は突然の雨に打たれた人たちはハンカチや手拭いで濡れた髪や服を拭い、軒下から空を見上げた。
今はガラスで覆われた店舗の軒下に駆け込んだ人たちは、焼け爛れた髪や皮膚を持っていた水で洗い穴の開いた服に目をやり、逃げ遅れてドロドロに溶けていく人たちの遺体を痛ましく見ている。
20世紀の頃から警告されていた大気汚染による酸性雨。
警告されても大気汚染は進み、22世紀の後半頃から雨と言えば水では無く硫酸を指す言葉になっていた。




