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時空機士クロノウス  作者: 宰暁羅
時空転移編
9/115

歴史の真実

今回、初めて挿絵機能というものを使用しました。




 朝食は胃にやさしいおかゆだった。梅干し入りのおかゆをよく噛んで食べることで胃への負担を軽減させる。

 ちなみにジンはおかゆをおかわりしては「腹に溜まりませんな」とのたまっていた。何様のつもりだ?

 やがておなか一杯になったのであろうジンは腹をさすりながら「次の訓練は十時からです。戦闘服に着替えておくように」と(一方的に)告げると、屋敷を出てどこかに去ってしまった。

 鮫介はゴードンを誘い、部屋に戻っていた。


「戦闘服って、これ?」

「はい、そうです」


 チェスト・キャビネットに最初から収納されていたそれはフィオーネやナレッシュも来ていた、ユニセックスな法衣だった。

 ただし色は他の人たちのものと違い、紫色をしている。


「それは虹の七機士の乗り手だけが着ることを許されている戦闘服。王の加護により、重力制御、冷暖房制御等々様々なボーナスが!」

「本当か~?」


 なんだかゲームみたいだな……と思いながらも袖を通してみる。

 足元がスカート構造なのが気になるが、ズボンも履いているし、そういうものだと割り切れば別段気にならない。

 それよりも……


「派手……じゃないかこれ」

「何を申されますか! もっと豪奢で華美な装いでも足りないくらいなのに」

「いやー、キツいよ」


 コスプレ? と想像してしまうくらい、服装は豪華絢爛だった。

 あちこちに金色の装飾が張り巡らされ、紫水晶――多分アメシスト――の細かい煌めきを反射している。

 そして、


「これ、胸板の部分開いてるのなんとかならないかな」

「男女兼用なのでしょうがないかと。フィオーネ様の、ご覧になったでしょ?」

「ああ……うん……」


 顔を赤くして、鮫介は目をそらした。

 初めて顔を合わせた時の、胸の谷間を思い出したのだろう。


「いやー大きいですよねフィオーネ様。胸の大きな女性はお好きですか?」

「…………嫌いじゃないよ」

「そうですかー。カルディアもそれなりに」

「そんなことより!」


 大声で遮る。スマートフォンを見れば九時三十分。

 猥談で時間を潰すわけにはいかない。


「頼みがある。地図を用意出来るか?」

「地図……ですか?」

「どこの領地出身って言われても、全然想像が付かん。ムー大陸の正確な領地図を把握しておきたい」

「ああ、そういうことですか」


 ゴードンは頷き、左の胸ポケットからボールペンを取り出すと、机の上に置いてあった白紙を引っ張り、


「少々お待ちください」


 と言って、まず日本地図を左上に描いた。

 続いてオーストラリアやニュージーランド、ハワイ諸島を隅々に配置し、真ん中が空白な地図が用意される。


「ここまでは、宜しいですか?」

「ああ。僕の知ってる世界地図だ」

「では……」


 ゴードンは気軽な感じで、太平洋上に大陸を描き始めた。

 それは、鮫介の世界に存在すると噂されたムー大陸よりも、ずいぶんと小さめだった。

挿絵(By みてみん)

「かつて王がこの世界にムー大陸を飛ばしたとき。流石に大陸全て飛ばせず、ある程度残してきた……と伝説には記されています」


 そしてその小さな大陸を切り取る線を描き、その上方を黒く塗りつぶした。

 それが、イニミクスの支配領域なのだろう。

 完成した地図を覗き見る。ミクロネシア連邦やポリネシアを丸ごと飲み込んで、大陸は一万二千年に転移してきた……ということらしい。


「しかし……ここまでイニミクスが驚異なら、アメリカは何をしてるんだ? それに日本も……人道支援くらい」

「コースケ様。アメリカや日本という国は、もう存在していません」


 鮫介の言葉を打ち切って、ゴードンは声を発した。

 アメリカや日本が……もう存在していない?

 どういうことだ?

 何を言っている?

 言いたいことはあるのに、鮫介の喉からそれらは出てこなかった。一つ息を吐き、鮫介は訪ねた。


「……日本やアメリカは、どうなった?」

「その前に、歴史について軽く概要を説明いたします」


 地図を挟んで、鮫介とゴードンが向かい合っている。

 それぞれの歴史の対立のように。


「まず、百年前まで……この国は姿を消し、地球は原住民たちの進行に任せていたようです」

「なに?」

「一万二千年前……何があったのかは存じませんが、同じ間違いが起こることを恐れたのでしょうか。真相はわかりませんが、このムー大陸は蜃気楼のように姿を透明にし、たまに紛れ込む漁船など以外の相手をしなくなりました」

「…………」

「そうして時代が進み、千九百年代。とある宇宙生命体がロシア帝国で見つかりました」

「それが……イニミクス?」

「はい。仔細は時間がありませんので差し控えますが、とにかく宇宙からの生命体ということで、ありとあらゆる国が沸き立ちました」

「そりゃ……そうだろうな」

「ですが、翌年千九百五年、宇宙生命体は海洋へと逃亡。そして……千九百六年に大攻勢をかけ、ロシア帝国は滅びました」


 ロシアが……鮫介の頭の中ではロシアはかなり強力な国であるイメージだが、それでも滅んだ。

 それだけでも歴史が違う。宇宙生命体とやらのせいなのか……


「そこからは虐殺の歴史です。ロシアを壊滅させた宇宙生命体……イニミクスは各国へ移動を開始。その黒い集団が触れた国は全てが滅びました。コースケ様の故郷である日本も、かなり耐えたのですが、やはり進行を食い止めきれず……」

「そう、か……」

「こうなると、引きこもってはいられません。ムー大陸は姿を現し、イニミクスを迎え撃ちました。幸い、イニミクスと戦うための兵器が――虹の七機士と機体(ナーカル)がありましたから」

「ナーカル?」


 聞き覚えのない単語に鮫介が反応すると、ゴードンは頭を下げ、


「そうですね。量産型の……ええと、ロボットとお考えください」

「量産型ロボットか」

「ジンさんも乗ってきているはずですよ。裏側の倉庫に整列しているんじゃないですかね」


 そうか、やけにデカい倉庫だったけど、そういうものもあるのか。

 鮫介が納得して頷くと、ゴードンは右手をパチンと鳴らし、


「後は……百年、ずっと戦争をしています。イニミクスはしぶとく、何度打ち払っても海からやってきます」

「そうか……」


 この国は、百年間も平和を知らず、勇者なんてものにすがるほどに……


「……こんなところです。領名に関しては、地図の通りに」

「ああ、すまない。早く覚えることにするよ」


 スマートフォンを見れば五十五分。あと五分しかない。


「とりあえず十分だ。行くぞ」

「はい」


 地図を拾って、ポケットにしまいながら部屋を後にする。

 平行世界に逃亡したのに、謎の宇宙生命体に襲われた国。

 その惨劇に、何かしらの運命のようなものを感じながら。




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