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時空機士クロノウス  作者: 宰暁羅
時空転移編
10/116

苦難の業

キャラ紹介ページとか必要ですかね?




 屋敷裏の倉庫には、自分のクロノウスが相変わらず包帯を巻き付けた状態で放置されていた他、ゴードンが言うところの機体(ナーカル)が数多く揃っていた。

 虹の七機士と比較して体格差が凄く、その腰元までしか全長がない。

 そして。倉庫の中央に、多くの人員を背にしたジンが立っている。ジンは鮫介が一定の位置まで近寄ると、大声を発した。


「勇者様に、礼!」


 そして、一つところの乱れもなく、全員で頭を下げる。

 鮫介が感心していると、やがてジンは頭を上げて、


「我ら、勇者様の近衛兵部隊、《オトナシ近衛部隊》!」

「オトナ……え?」

「私は隊長のクレーチェ・テルブ・テト・ジン! そして――」

「副隊長その1、ナタツ・ダロン・テト・シュリィっス。よろしく、勇者様」

「副隊長その2、トロノア・マガシャタ・テト・グラウリンデ。始めまして、勇者様」

「副隊長その3、サヤン・トホ・テト・ヒナナと申します。お会いできて光栄ですわ、勇者様」

「あ、ああ……よろしく……」


 鮫介が近衛部隊の名称に唖然となっている間に、既に副隊長たちの挨拶が済んでいた。

 オトナシ近衛部隊。そりゃ僕は音無鮫介だけどさぁ……もうちょっと……何か無いの?

 内心そんなことを考えつつ、鮫介は副隊長たちの様子を見る。

 美少女である。まさか隊長が好みで集めたんじゃなかろうな。

 副隊長その1ことシュリィは背が低く、赤髪をざんばらにした野生風味。

 グランリンデは眼鏡をかけ、その鋭い視線でこちらを伺っている。

 ヒナナは……日本の着物? 浴衣? を着ていた。長い黒髪によく似合っている。あとめっちゃ笑顔。

 思ったことは、お前ら制服とか軍服を着ないのか? ということだ。三人とも……いや隊長や兵士も含めて全員バラバラの服装を着ている。巨大ロボットって凄い揺れると思うんだけど、重力制御とか大丈夫なんだろうか。

 そうこう考えているうちに整備班等の紹介も終わり、鮫介が声をかけてあげる場面となっていた。背後のゴードンをちらりと見ると、「頑張ってください!」とばかりに両手に力をこめている。くそぅ。


「勇者として召喚された音無鮫介……この国風に言えばオトナシ・ニーガタ・ネア・コースケです。まだまだ分からないことばかりですし、クロノウスも操縦出来ないけど、どうか皆さん、よろしくお願いします」


 頭を下げると、揃った礼で返された。

 うーん。元の世界で軍隊の演習とか見たこと無いけど、本当に礼がぴったり揃うんだな。どうやってるんだろう。

 さて。朝礼が全て終わったところで、ジン隊長が鮫介に尋ねる。


「さて勇者様! クロノウスが操れないということでしたな?」

「鮫介で構わない。ああ、そのとおりだけど」

「ふむ。おそらく、クロノウスとリンク出来ていないのですな」

「どういうことだ」


 リンク?


「話によれば、虹の七機士の操縦者たちは、七機士と話し合い、契約を結んでいるらしいのです」

「な、なんだそれ。七機士と話し合うって、意思を持っているのか?」

「当然でしょう。虹の七機士は機体(ナーカル)と違い、自ら意思を持つ存在。故にこそ、我らは彼らを機士と呼称し、慕っているのです」


 そうだったのか?

 背後のゴードンに目で問いかけるが、ゴードンは何を勘違いしたのかサムズアップの仕草をしている。違ぇよクソッ!


「知らなかった」

「なので、リンクを目指してみましょう。クロノウスに騎乗して、心を落ち着かせてマニューバ・クリスタルに触れてみてください」


 そう言われれば、やってみるしかない。

 そんなわけで、キャットウォークを登ってクロノウスのコクピットのハッチ前に。キャットウォークって初めて登ったけど足元透け透けで怖いなぁ。


「では、お乗りください」

「包帯巻きっぱなしだけど、いいの?」

「時が来れば、自らの意思で外すでしょう」


 そういうものか?

 わからないが、とりあえず納得してコクピットに入り込む。ハッチが閉まると、薄暗い室内は召喚直後の様子を思い出させた。

 響太郎が死にそうで、ばたばたしていたなぁ。響太郎は結局、無事だったんだろうか。まぁ、響太郎なら無事だろうけど。

 椅子の肘掛けに、マニューバ・クリスタルなる紫色の水晶がある。鮫介は唾を飲み込み、ゆっくりと手を置いた。

 何の反応もない。

 目を閉じて、集中する。両手に強く意識を向ける。すると……


(――すか。聞こえますか、オトナシ近衛部隊)

「!?」


 突然、フィオーネの声が脳内に響き渡り、鮫介は身を竦めた。

 ハッチを開くと、ジン隊長はまるでフィオーネと交信しているかのように片耳に手をやり、受け答えしている。


「はっ。現在は勇者殿をクロノウスにリンクさせようと……えっ? はぁ……承知しました」

「?」


 鮫介はキョトンとする。フィオーネの声はもう聞こえない。

 交信を終えたのか、ジン隊長は呆然とした様子で眺めている鮫介に気付くと、


「コースケ様……フィオーネ様がこちらに寄ります」

「ああ、昨日そんなこと言ってたけど……今のは?」

「あれはフィオーネ様の交信(テレパス)ですね。ガルヴァニアスは、そういう念動力が得意なようで」

「ふぅん……?」


 出た、念動(ちから)。そういえば、ゴードンにどんな念動力があるのかとかを聞くのをすっかり忘れていた。

 こっちでいう超能力と同じものなのかな。

 とりあえずハッチから引っ張り出され、出迎えするために倉庫の外へ向かうことになった。

 途中、


「リンクってやつ、出来なかったよ」

「そうですか。じゃあ力づくになりますね……」

「力づく……?」


 という会話があった。

 力づくでなんとかなるのか……と思ってると、真っ昼間の空に流れ星が落ちた。

 いや、違う。流れ星は方向を変え、ジグザクに空を移動している。


「うーん、ガルヴァニアスは相変わらず無茶苦茶な動きをしますな」

「あれも、念動力なのか?」

「左様。ガルヴァニアスはヴォルトキネシスを得手としていましてな。自身の装甲を雷に変え、空を自在に飛空するのです」

「ヴォルト……?」

「まあ、雷が操れる念動力と思っていただければ」

「はぁ」


 言ってるうちに流れ星はこちらへ一直線に進路を変えていた。装甲を元の姿に戻し、ゆっくりと降下している。

 フィオーネの愛機、万雷機士ガルヴァニアスだ。ハッチを開いたフィオーネは、鮫介が下で待っていることに気付き、すぐに機体を降りた。

 髪の毛と瞳の色は金色になっていたが、機体から降りると次第に元の色に戻っていく。


「来ていたのですか、勇者様」

「あ、はい。クロノウスは相変わらずですけど」


 ゴードンが胸の話をしたばかりだからか、不思議と照れる。その本人は隅のほうでよく分からないジェスチャーを送っている。意味わからん。

 フィオーネはジン隊長のほうへ向かい直した。


「リンクに成功しましたか?

「いえ、失敗いたしました」

「……まぁ、そんな簡単なものではないでしょう」


 フィオーネがため息をつく。そうなのか?


「ナレッシュ様は『凍結』に乗り込んで即動かしたらしいですが」

「あれは天才です。忘れなさい」

「はっ」


 ナレッシュ……


「そこで、強制的にリンク接続させるため、『苦難の業』を与えようと思うのですが」

「『苦難の業』を……」


 思案顔を見せるフィオーネ。『苦難の業』、名称からしてピンチだ。あ、危ないのはやめてね?

 しかしフィオーネは自身の機体をちらりと見上げて、頷いた。


「まぁ……私のガルヴァニアスがいるので、最悪、なんとかなるとは思いますが」

「ありがとうございます」


 肯定されてしまった。


「ではコースケ様」

「何」

「もう一度、クロノウスに乗っていただきましょう」


『苦難の業』とやらを僕に科すためだろう?

 冗談じゃない。朝、あれだけ走らされた後なんだ。お前の言うことなんか聞くわけ無いだろう。


「では勇者様、お願いします」

「……鮫介で構いません」


 フィオーネさんに頼まれると弱い。命を助けてもらったからね。決して普通に立ってるだけで見えてる胸の谷間とか、そんなのは関係ない。


(しょうがないな)


 仕方なく、キャットウォークを再び登り、クロノウスのコクピット席に座る。

 ベルトを締め、マニューバ・クリスタルに触れてみるが、当然のように反応はない。

 もしも響太郎だったら、普通に動かして――いや最初のタイミングで動かしてるか。

 物思いに耽っていると、突然振動が襲いかかった。


「フィオーネさん?」

「少し移動しますよ」


 コクピットの中にいると、外の様子がまったく分からない。まぁおそらく、ガルヴァニアスは浮遊して、クロノウスを運んでいるのだろう。

 しばらくガシャンガシャンとけたたましい機械音と共に待っていると、しばらくして機械音が静止する。移動が終わったらしい。


「聞こえますか? コースケさん」

「はい」

「暗闇の中で何も出来ないとは思いますが……背後に私がいます。危なくなったら、必ずお助けしますので」

「ありがとうございます」


 念動力ではなく、肉声での会話。

 背後にいるだけ、とのことだが、それがどれだけ勇気が湧いてくるだろうか。

 機体の外からは、「ゼンインケイチュウ!」「ジッセンクンレンヲカイシスル!」「ブソウハスベテシヨウカノウ!」「ダンソウハスベテペイントダンニカンソウ!」「イジョウ! シツモンハ!?」という大声が響いていた。

 何が起きるんだ……正直怖い。





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