2-1
最初にレッフェルと出会った草原を東に進んで行く。
時折魔族と遭遇するものの、
聞いた通りエーデルシュタイン近辺は下級ばかりで、
2人は難無く魔族を倒して進んで行く。
この辺りの魔族は、植物種魔族と言うらしい。
その名の通り、植物のような姿をしている。
植物種魔族は、
中級から“アルラウネ”と呼ばれるようになり、
中級から人型に近い姿に変身できるそう。
植物種魔族以外の魔族も同じように存在し、
・血を吸う美しき吸血種魔族の“ヴァンパイア”
・しなやかな肉体の愛玩種魔族の“ワーキャット”
・荒々しい性格の獣畜種魔族の“ウェアウルフ”
・鱗を持った有鱗種魔族の“メドゥーサ”
・翼を持った有翼種魔族の“ハルピュイア”
・水中戦を好む海洋種魔族の“ローレライ”
・二対以上の角を持つ多角種魔族の“ミノタウロス”
・精神を侵す悪魔種魔族の“インキュバス”
・恐ろしい姿をした死霊種魔族の“ゾンビ”
以上の魔族が存在しているのだと
フォルケッタが得意げに教えてくれた。
「何でも、生前罪を犯し天界に召されなかった魂が魔族となるそうですよ」
日も暮れてきたので、草原を越えた先の森の中、
泉の畔で夜を過ごすことにした。
焚き火を炊きながら、レッフェルがぽつりと漏らした。
「ヒトは皆、死後は魂のみの存在になるそうです。美しい魂はまた新たな命として産まれ、醜い魂は棄てられ魔族となるそうです。美しい魂は神様からの慈愛で魔力を与えられ、この世界に産まれたヒトは皆魔法が使えるのですよ」
内心、宗教染みてるなって思ってしまった。
反応に困って、へぇ‥‥と曖昧な相槌をうつ。
「あ、引かないでくださいね。昔聞いた“御伽噺”です」
「‥‥有名な話だよね。僕も知ってる」
「真偽はどうあれ、罪を犯すのは良くないですから」
マカロンを齧りながら2人の話に耳を傾ける。
素朴な疑問何だけど、酒場の時もそう、
私の両サイドに2人がセットされるのは何故なのか。
守っていただいているということでよろしいか。
「結局まだ名前は判らずじまいなんだっけ?」
「名前‥‥かは判からないけれど、これが」
胸元のブローチを外して、ロケットの中身を見せる。
calixの文字を見て、レッフェルは首を傾げ、
フォルケッタは黙り込んで険しい顔になった。
「カリス‥‥“聖杯”を意味する単語ですね」
「‥‥」
「フォル?顔色が悪いけれど大丈夫かい?」
「酒場の‥‥襲撃事件で、上級魔族が言ってた‥‥“聖杯”を探してるって」
「「!!」」
ザア‥‥。
急に辺りの草木がざわめき出す。
2人は剣を抜いて私を背に挟むように構えた。
微風の中に一際強い風が吹くと同時、
2人は剣を振りかざした。