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フェアリーテイルオブシーヴ  作者: unique
【Ⅰ】エーデルシュタイン王国
7/58

1-7

「おはようございます‥‥」


とても眠い。

レッフェルとフォルケッタが寝た後も、

彼らの傷が痛まないか心配で眠れなかった‥‥。


そして朝の5時を時計の針が刺した時、

召使いの方伝に国王様からお呼びがかかった。


「ああ、おはよう。朝早くにすまないね」


レックスの部屋は絵に描いたような王家の書斎だ。

応接用のソファに案内され腰をかけると、

無限に体が沈んでいく柔らかさが虜になりそうだ。


「寝れていないだろう。2人の部屋に召使いを寄越したから、君は少し休むといい」


そう言って国王様は机に向かって書類仕事をしている。

自分は働いておきながら、他人を休ませるなんて。


よく見ると、彼の顔には疲れが滲んでいる。

沢山の召使いや傭兵の前ではちっとも分からないのは、

きっと隠しているからなのかな。


私はソファから立ち上がり、国王様に歩み寄る。


「‥‥ん?どうかしたか?」

「あの、一緒に寝ませんか?」


レックスは口をぽかんと開けて、

国王らしかぬ間抜けな顔をさらした。

が、それも束の間。

いつものどこか威厳溢れる姿に戻った。


「すまないが、私には仕事が‥‥」

「疲れが出てますよ。そんな姿じゃ、従う人たちもきっと不安になります」


椅子に腰掛けた国王様は、

立っている私より小さく感じる。

少し痩けた頬にそっと掌を合わせて、

うっすらくすんだ目元を親指でなぞった。


大人しく瞼を伏せる彼が何だか母性を擽るので、

つられて柔らかい彼の髪を手で梳くように撫でる。


後で我に返るのだが、

私は国王様になんてことをしてしまったのだろう。

しかし彼には、私なんかよりもよっぽど、

人を魅了し従いたくなるような魅力が溢れている。


ぽすんと、彼の頭の重さが私の胸に預けられた。


「確かに、な‥‥君の言う通りかもしれない」

「少しだけでいいです、休みましょう」

「ああ、だがな‥‥一つ覚えておくといい」


彼が椅子から立ち上がる。

急に私の背丈を追い抜いて、見下される。

腕を掴み上げられ、

空いた片手で腰を抱かれて引き寄せられると、

鎖骨が、温かいような痛むような感覚に襲われる。


「ぁ、‥‥っ」

「‥‥国王である以前に、私は一人の男だぞ」


爆発するんじゃないかってくらいに、心臓が高鳴る。

マカロンは夜中に食べた。

まだ効いてるはずなのに‥‥一体何故。


「わ、たしは‥‥あなたに、休んで‥‥欲しくて‥‥」

「‥‥ふふ、驚かせてしまってすまない」


ギラギラと獣のような眼光をしていた瞳は、

元の優しい眼差しに戻り、

国王様は私をひょいと抱き上げて、

隣の寝室のベッドまで運んで下さった。


「ごめんなさい‥‥軽率な真似を‥‥」

「否、気にするな。私も疲れていた‥‥少し、休む‥‥」


腕枕をされたまま、私は意識を手放した。


***


目を覚ますと、ばっちり国王様と目が合った。

寝る直前のことを思い出し赤面するが、

国王様は笑って私の頭をぽんぽんと撫でるだけだ。


大人の余裕ってやつでしょうね。うん。


看病につきっきりでお風呂に入れていない私を案じ、

レッフェルとフォルケッタの部屋に帰る前に

召使いの方に浴室を案内された。

脱衣所の鏡を見る。瞳はやっぱり赤いまま。


そして、驚いたことが2つ。


1つ目は、洋服。

私が着ている服は、元いた世界で私が

デザイン案を出したワンピースだった。

(今まで全然気づいてなかった)


2つ目は、‥‥ンンッ。

国王様に、き、キスマークを付けられた所に。

見たことも無い不思議な文様が刻まれていた。

何だろうこれは、聞きたいけど気まずい。

多分悪いものでは無いのだろうけれど‥‥。


浴槽から出ると、

着ていた服が新品のように綺麗になっていた。

これも魔法なのかなあ。

あ、国王様と同じ匂いがする。いい香り~‥‥って、

変態みたいじゃないの私!やめなさい。


服を全て身に付け、最後に胸元にブローチを付ける。

でも、このブローチは私のデザイン案には無かった。


付ける途中落としてしまい、

その衝撃で二つに割れてしまった。

慌てて拾い上げたが、造りがロケットになっていただけで

壊れてはいなかった。

よく見ると、ロケットの中には文字が刻まれていた。


(calix‥‥カリス?)


よく分からなかったので、

そのままロケットを閉じて胸元に装着した。

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