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フェアリーテイルオブシーヴ  作者: unique
【Ⅶ】コハク国
49/58

7-1

光の燦くヘイヴン、メーテル神殿内。


「“花嫁”は見つかったか、コメテス」

「うぅっ……全然ダメっす、せんぱぁい……もういっそ地上に降りて探した方が早いっすよぉ……」

「ちょ、止めてよ!地上に降りたらあんた二度と天界に戻って来れなくなるのよ!?」

「メヌリスの言う通りだ。君がソロネになった時に、セラフ様から堕天についての説明があっただろう」

「でも……」

「……君がソロネになる少し前、天界から1名堕天した。彼は優秀なケルブ様の位だったが、一向に進捗がない。ケルブ様に出来ないことが、君に出来ると思うか?」


「……っ先輩のわからず屋!!」

「あー……どっか行っちゃった。どうすんのあれ……」

「煩い、君が何とかしろ」

「理不尽ッ!!!」

「“神様”のお役に立ちたいのは皆同じ気持ちだ。ただ、彼はその気持ちが強すぎて、ひとりよがりしている。その結果堕天してしまえば、元も子もない」

「だよねぇー。コメテスは新人だから張りすぎちゃってるし、もっと肩の力抜いた方が良いよねー」

「……君は抜きすぎだ、もっと天族の自覚を」


「ヘリオス、メヌリス、丁度いい所に……おや?コメテスはどうしましたか」

「はわわ、コスモスしゃま!!実はですね、ヘリオスの奴がコメテスを虐めまして……」

「おい」

「それはいけませんね……ソロネの3名に、頼みたいことがあったのですが……彼を連れて来れますか?」

「はいい!!このメヌリス、コメテスを必ずや回収して参りますので!!」

「君……後で覚えていろよ」


***


次なる目的地は、コハク国。

しかし、場所は分かっていない。

現在、オベリスクの下僕であるインテロバングと、

ゾンビ、ミノタウロスの上級が

コハク国の在処の捜索に当たってくれている。


「サプフィール王国滞在中に目にした情報なんだが……“ドラゴニュート族”冒険者が最近話題になっているようだ」

「ドラゴニュート族……?」

「あー、めありちゃんは見た事ないんじゃない?」

「聞いたこともないわ」

「んーとねぇ、ドラゴニュート族ってのは」


ラビリンスが説明してくれた。


ドラゴニュート族とは、

分類としては人間に分けられる種族。

“火属性”を持つ者だけがドラゴニュート族になれる。


長年、火属性は上級属性が無かった。

しかし、火属性自体は下級属性の中でも

ずば抜けて強力だったため、

魔法の腕を磨けば他の上級属性とすら渡り合えたと言う。


ただ、結局は下級属性。

同じくらい魔法の腕を磨いた上級属性相手では、

やはり勝てる術はなく、

何時しか“劣属性”のレッテルを貼られていた。


ある時、火属性の上級属性を伝授する者が現れた。

公に現れてないため詳しい情報は不明だが、

その者は火属性の上級属性“竜属性”を謳い、

更なる強さを求める火属性使いにそれを伝授した。

極限まで火属性を磨いた者しか認められないと言う。


その竜属性を得た者は、

世間では“ドラゴニュート族”と呼ばれているそうだ。


竜属性を得る為には、

とある物を飲み、それを上手く体内で消化せねばならない。

鍛え抜かれた肉体でないと消化出来ずに、

魔族へと変貌して、その場で殺されてしまうそうだ。


因みにオベリスクのキメラ技術は、

ドラゴニュート族をヒントにして生まれたらしい。


「因みに、その“とある物”って……?」

「本当かどうかは判んないけど、臥竜種魔族の鮮血(ドラゴンブラッド)じゃなかったっけ?」

「そうだ。その冒険者に会えば、何か掴めるかもしれない」

「なるほど……臥竜種魔族は、11体目のオリジナルが生まれた瞬間に殺してしまう。でも、ドラゴニュート族がいるって事は、臥竜種魔族と接触している人がいるってことね。ドラゴニュート族に、伝承者について聞き出せれば一歩コハク国に近付けるわ!」

「さすがめありちゃん!頭良いねぇ!」

「件の冒険者は、昨日の時点でイズムルートに居たらしい。部下が探してくれている間、ただ何もせず待っている訳にもいかないだろう。まずはイズムルートを探してみないか」

「分かったわ!」

「はいはーい了解、アクちゃん行くよ~」


めありはエーデルシュタイン、イズムルート、

グラナティス、アレアシオン、サプフィールの

五大国を踏破したため、

テレポートが可能となり、移動に困らなくなった。


ラビリンスが悪路王を引き摺って先にテレポートし、

次にめありがテレポートしたのを確認すると、

オベリスクも追うようにしてイズムルートへ移動した。


***


木々のざわめく音と、様々な小鳥の囀りと、

水の細流ぎに花の蜜の香り。

うっすらと目を開けると、

イズムルート王国の入り口近くにめありは居た。


上手くテレポート出来たようで、

ほっと胸を撫で下ろした。

クロイツとはあんな別れ方をしてしまったし、

流石に直に国内テレポートはまずいかなと思って、

少し座標をずらしたのよね。


すぐ近くの木の上から、

悪路王を背負ったラビリンスが飛び降りてきた。

少しして、オベリスクもやって来た。


「それ、重くない……?」

「…………すぅ……すぅ」

「んー?いつもこんな感じだし、気にしないでいーよ」

「まさに寝る子は育つ、か……っと、少し国から離れよう」


流石に巨漢を軽々と背負う痩せ型の男に、

顔に刺青の入った白黒髪の男、

そして、何の変哲もない

一般人女と言う謎の組み合わせは

不審がられるのでは無いだろうか……。


というオベリスクの提案で、

少し国から離れた森にテントを張ることにした。

オベリスクが何やら魔法の力で……


……テント?

完全にこれ、一軒家に見えますけれども。


「簡易式だがテントを作ってみた、入ってみてくれ。窮屈であれば増築も出来るぞ」

「充分です」

「ふむ、そうか……?」

「リスちゃんセンスいいねぇ!おっ?悪路王が……」


もそもそ、と効果音が聞こえてきそうな動きで、

悪路王がテント(?)に入っていった。

気に入ったのだろうか、そのまま出てこない。


「まだ明るいんだけどなぁ……ま、いっか」

「竜属性とは言え、此方はキメラにオリジナルだ。力としては足りて余るほどだし、気にすることは無いさ……君も、頼りにしているよ」

「頑張ります!」

「さて、此方から探すよりも手間が省けそうな作戦があるんだが……耳を貸してくれ」




まあ、こうなるよね。


めありの周囲には、

数体の死霊種魔族が集まって、彼女ににじり寄っている。

つまり、囮作戦ってやつです。


「きゃー!!ま、魔族がー!!」


必死に魔法攻撃を仕掛けるが、

割と本気なのになかなか倒れてくれない。

これ、大丈夫?

ちゃんとラビリンスが操作してるのよね?


なんて考えていたら、片足を取られてしまった。

うっ、腐臭がキツい……吐きそう。

ドロドロの皮膚がめありの脚にこびり着いて、

彼女の足を纏っていたストッキングを溶かした。


「ちょっ、やだあ!何これ!」


(あ~やべぇ超楽しい~)

(少しやり過ぎでは無いだろうか……)


茂みから様子を伺う2名。

めありは彼らが隠れる茂みを睨んだ。


その時、辺りが真紅の炎に照らされた。


真紅の息吹(クリムゾンブレス)


炎が死霊種魔族に付着して、彼らを焼き尽くす。

このままだと私も燃えてしまう。

何か、適切な魔法を……。


必死に思考回路を巡らせていると、

ふわり、宙に浮かぶような感覚がした。


視界には、何時もより近く感じる太陽。

その逆光でよく見えない誰かの顔。

しかし、夕陽を閉じ込めたかのように鮮やかな、

切れ長の瞳だけははっきりと確認できた。


地上50メートル程の高さまで飛んだ男は、

近くの木陰に飛び降りると、そっとめありを下ろした。


「怪我、あらへん?」


男はめありの溶けてしまった服を見て、

驚いたように目を丸くして、ばっと視線を逸らした。

そして、肩に羽織っていた布を、

彼女を見ないようにして器用に肩にかけてやった。


「え、ええ……助けてくださって、ありがとう」

「ほんならええねんけど」


えっ、関西のほうの人?

此方の世界にも訛りってあったのね。

潦もちょっと喋り方が独特だったけれども、

あれは訛りというか古風な感じ(失礼)よね。


橙色の瞳に、燃えるような赤い髪。

頬や喉の皮膚は一部硬化し、宝石のように煌めいている。


「綺麗……」

「……はぁ!?き、急に何言い出すねん!」

「あ、ごめんなさい」

「えや、まぁええけど……あんさん、装備修理しなあかんな。イズムルートまで送ったるわ」


「その必要は無い」


カツ、カツ。

革靴を鳴らしながら歩いてくるオベリスク。

煙管をくゆらせながら、

悪役みたいな笑みを浮かべて此方へやってくる。

男は警戒して、構えの体勢に入った。


「つっかまーえた♪」


しかし、いつの間にかラビリンスが

すぐ側まで来ていて、

瞬く間にその男の両腕を背面で固定した。


急な出現に反応できなかった男は、

抵抗虚しく、ラビリンスに捕縛されてしまった。


これ……傍から見たら、完全に悪役の所行よね?

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