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フェアリーテイルオブシーヴ  作者: unique
【Ⅴ】アレアシオン王国
33/58

5-1

あの後、一旦私達はグラナティスに戻った。


事件の概要を国王様に報告すると、

今日はとにかく休むようにと宿屋に送還された。


フォルケッタが私の毒を心配してくれたが、

ワルツが毒属性の魔法を使えるので、

彼に解毒してもらうから大丈夫と伝え、別れた。


フォルケッタと別れたところで、

強制的にヴァリオンに召喚されたのか現在。


「まずは、解毒 しないと」

「なんで知ってるんですか?」

「ずっと 見てた」


相変わらずヴァリオンは暗い。

洞窟の方がまだ明るかったかもしれない。


カンタレラに差し出された解毒剤を口にする。

めありが全部飲み干したのを確認すると、

隣にいたミッチェルが口を開いた。


「気分はどう?」

「うーん、特に変化は……毒を盛られた時も気付かなかったですし。解毒剤、ありがとうございます」


空になった小瓶をカンタレラに返すと、

ふと疑問だったことを思い出した。


「あの時、私に飲ませた小瓶の中味は何だったんでしょうか?お酒のような味がした気が……」

「ああ!あれはただの白葡萄酒だよ」


ただの、白ワイン?そんなはずが無い……。


私はお酒が好き。

この世界に来る前までは、よく飲んでいた。

特に赤ワインが好きで、

自分へのご褒美として週一は必ず飲んでいた。


そして、たまに白ワインも飲む。

しかし他人にオーラを授けたり、

目の色が変わったりしたことなんて、な……


「……ああああ!!」

「……なんだ、喧しい」


あったわ。

赤ワインを飲んで、目が赤くなった事が。

そもそもそれがきっかけで、

こちらの世界に来たんだわ。忘れていた。


「あの、知っていたらでいいんですけど……何で私、ワインを飲むと身体に色々起きるのでしょうか?カンタレラが私をこの世界に呼んだ時もそうでした。私、ワインを飲んでいて」

「媒体」

「ばい……え?」

「あんた 向こうで しょっちゅう、飲んでた でしょ?だから、葡萄酒を 媒体にした。あんたの肉体に、闇属性の魔力を 送り込む、媒体」

「ほぉん……?」


……一人暮らしだったから、

あまり人目を気にしていなかったのだけれど。


何時から見られてたのかしら……。


「簡単に言うと、貴様と私達を繋ぐものだ」

「俺達が助けるとグレーゾーンだからね。めありさんの身体を通して、さも君の能力のように見せかけたんだ」

「なる……ほど。赤と白で違いはあるんですか?」

「赤は 術者が切るまで 永続、白は 一定時間」

「赤葡萄酒はこちらの世界では希少なんだ」

「ほへぇ……」

「随分間抜けな声だな」


赤は永続、白は限定かあ……。

まあ、忘れてしまった記憶が戻るまでは

元の世界に帰るつもりは無いけれど、

帰ろうとするならカンタレラの許可が必要なのね。


現実世界の私は何をしているのかしら。

眠っているのか……それとも、

肉体ごと消えてしまったのかしら。


「あ、そうそう。媒体を飲まずにオリジナルの魔力を送ると、君の肉体は耐え切れずに破裂しちゃうからね。気を付けて」


ミッチェル……貴方、さらっと怖いことを言うのね。


***


とりあえず私は、白ワインを飲むと

よく分からないけど何かしらの能力が発動する、

という設定で行くことにした。


グラナティスの宿に戻って時間を確認すると、

ヴァリオンに呼ばれる前と変わっていない。


シャワーを浴びると、そのまま眠りに就いた。




次の日、目が覚めて準備をしていると、

部屋までフォルケッタが迎えに来てくれた。

ロンドとワルツは既に準備が出来ていたので、

急いで支度を整えて外に出た。


宿を出ると、国王のヘルツが待っていた。


「めありちゃん……改めて、怪我が無くてよかったわぁ。うちの者が迷惑を掛けたわね。何てお詫びしたらいいのかしら……」

「いえ、ヘルツ様は悪くないですから……お気になさらないで下さい」


今回の依頼主である鉱夫労働者を問い詰めた結果、

以外にもあっさりと白状したそうだ。

あの洞窟が最近見つかった天然ものだと言うことは

事実だったが、

最初から魔族がいた訳では無かったそうだ。


鉱夫労働者も詳しくは事情を知らず、

レッフェルに言われた通りに動いていただけだった。


そして、めあり達が休んでいる間、

ヘルツは寝ずにキメラの情報を集めてくれていた。

レックスもそうだったが、

どうか人並みに休んで欲しいし寝て欲しい。

国王という立場上、難しいのはわかるけれど……。


「グラナティスから見て西に“アレアシオン”と呼ばれる王国があるわ。そこはね、科学の国とも呼ばれていて、世界中に存在するあらゆるものの研究が行われているのよ。科学者の探究心を重んじる国で、他の国と比べて道徳に欠ける部分もあって……」


科学の国、アレアシオン王国。

科学者達が集まる、科学の発展のための無法地帯。

他の国で人徳を疑われるような行為でも、

この国でなら許される。

それが、科学の発展に貢献することならば。


確かに、キメラの研究をするならそこしか無い。


更に、キメラと思わしき人物を

アレアシオン周辺で見たとの情報も手に入れたそうだ。


「女の子を行かせるのは心配だけれど……うちのフォルちゃんがいれば、大丈夫よ!」

「はい、フォルケッタの強さを信頼してますし……私も、彼を支えられるように頑張ります」

「あらあら~♡」


ちょいちょい。

ヘルツがフォルケッタに手招きをする。

嫌そうな表情をするも、渋々ヘルツに近寄った。


(で、お二人さんは何処まで行ったのかしら?♡)

(はぁ……本当余計な事しなくていいから)

(んもぅ、いけずなんだからっ♡でも……)

(ん……)

(ちゃんと、護ってやるんだぞ。母さんみたいに……絶対に失ったら駄目だ。応援してるからな)

(……うん、そうだね)


親父、悲しそうに笑わないでよ。

親父が母さんを護れなかったんじゃない。

あんたには他の責任があったんだ。

僕にも何れ、あんたの責任を継ぐ時が来る。

でも今は……。


彼女は此方を見て笑っている。

僕達を仲がいい親子だと思っているんだろう。


彼女を好きだと自覚した。

自覚したんだ、二度と自分の気持ちに迷わない。

必ず護る。傷一つ付けさせやしない。


「ありがと、父さん」


ぽんと、背中を押された。


パパって呼ばれたかったなーなんて笑う彼は、

紛れもない、唯一無二の僕の父親だ。

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