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フェアリーテイルオブシーヴ  作者: unique
【Ⅳ】グラナティス王国
27/58

4-3

ヘルツは、ロンドとワルツを連れて

何処かへ行ってしまった。

その場に残された、めありとフォルケッタ。


去り際にヘルツがフォルケッタに対して

ウィンクをしたのは、恐らくそういう事だ。


(そんなんじゃないって……)


ちら、とめありを見るとバッチリ目が合って、

彼女は首を傾げた。


確かに彼女は可愛らしいし、

いつも美味しそうにご飯を食べる姿が好きだ。

薔薇色の瞳も綺麗だと思うし、

女性らしい喋り方も、仕草だって良いと思っている。


彼女の傍に近寄れば、甘くていい香りがして、

もっと傍に居たいとすら思える。

何時か彼女が元の世界に戻ってしまうことは……

あまり、考えたくない。


ただ、それだけだ。

別に好きだとか、そういう訳じゃない。


「元気なお父さんね」

「はぁ……まぁね。折角だし、案内するよ」

「まぁ、ありがとう」

「別に……」




グラナティスには、沢山の間欠泉がある。

見分け方を教えながら建物の案内をしていると、

遅れてレッフェルがやってきた。


「お待たせしました……!」

「レッフェル!よかった、無事みたいで……!」

「ふん……遅かったじゃん」

「すみません、何しろ数が多くって……」


傷一つないレッフェルの姿を確認し、

ほっと胸を撫で下ろした。


3人が揃った所で、グラナティスでの依頼を確認する。


グラナティス近辺にて発見された洞窟。

有用鉱物資源が豊富なグラナティスの

新たな鉱山となりうる洞窟だったが、

中には魔族が蔓延っており、

迂闊に近付くことができないそうだ。


まずは洞窟内の魔族の討伐と、内部調査だ。

中の安全が保証できれば、

専門家の方々が開拓してくれるらしい。


今日は一旦宿で休んで、明日出発することになった。


「宿はこっち……」

「そういえば、あの子たちはどうなったかしら」

「あの子たち?」

「ああ、フェルには言ってなかったけど……」


グラナティスに向かう途中に助けた、

ロンドとワルツのことを伝えた。


「なるほど、そんな事が……可哀想に」

「今は、ヘルツ様と一緒に居るわ」

「一応国王だし、迷惑かかるから引き取りに行くよ」


宿に向かう前に、2人を回収する事になった。


***


ロンドに関してはまあ分かる。

膝丈のショートパンツが良く似う、

貴族風の少年のような服装は彼にぴったりだ。

彼自身も満更では無さそうだった。


ただ……ワルツの服装が、

ふんだんにレースとフリルをあしらった、

完全に女性物の服装なのには思わず顔がひきつった。

髪の毛にはリボンまで付けられている。


もしかして、女の子と勘違いされた……?

確かに、子供の姿になってさらに中性度が増している。


「どぅお?2人ともよーく似合ってるでしょう♡」

「あの……俺、男なんだけど……」

「いいじゃないかワルツ、良く似合っているぞ」

「その服は僕が昔来てた服だけど、女物は何なの?」

「ママの小さい頃の服よ~♡女物って滅多にウチ置いてないから、取ってあるのよ~♡」


そういえばダークエルフって、

男児の出生率に極端に片寄ってるのよね。


「ロンドも、ワルツも。とっても素敵よ」


屈んで2人の頭を撫でると、

ロンドは当然だと言うような顔で腕を組み、

ワルツは恥ずかしそう頬に両手を添えた。

うーん、子供って何をしても可愛いわね。


無事2人を回収できたので、

ヘルツに別れを告げ、めあり達は宿屋に入った。


グラナティスの宿屋の名物は、

なんと言っても温泉だそうだ。

次に、各部屋に設置された岩盤浴。

遠赤外線の力で血行促進、新陳代謝もアップ!

私はと言うと、もうウキウキ気分だ。


部屋は、レッフェルとフォルケッタで一部屋、

私とロンドとワルツで一部屋の、計二部屋借りた。


まずは部屋に入って、宿着に着替える。


「2人はこれからどうするの?」

「しーっ」


ワルツが唇の前で、人差し指を立てた。

不思議に思って首を傾げると、

脳内に直接言葉が聞こえてくる。


(アルカデアの人間が魔法を使えることを忘れるな。盗聴されている可能性もある)

(……マスカレド?)

(ああ。今はロンドだがな……今後、バレると危険な会話は脳内に直接話し掛けるようにする)

(俺もそうするから、よろしくね)

(ええ……わかったわ)

(設定としては 、年齢の割に優秀な魔法を使う子供だから、今後君たちの冒険者業務に携わるつもりだよ)

(闇属性さえ隠せればバレない。魔法を扱う際は、適当な属性に変換するように打ち合わせ済みだ)

(なるほど)


「めありお姉ちゃん、一緒に温泉行こうよ」

「そうね、みんなで行きましょうか」

「仕方ないな……付き合おう」


***


露天かと思いきや、火山灰の影響があるからと、

案内されたのは屋根と囲いの備えられた天然温泉。


湯の色は血のように赤く禍々しいが、

温泉の説明が書いてある岩に、

発汗促進、疲労回復、エイジング、美白効果……と、

嬉しい効能がふんだんに書かれていた。


湯に浸かると、気泡が肌に纏わり付いて

しゅわしゅわする感じがした。


「はぁ……気持ちいいぃ……」


首まで浸かって温まりながら目を閉じる。

気のせいかもしれないが、

いい成分がじわじわ身体に入ってくる感じがする。


ロンドとワルツはお湯を掛け合いながら遊んでる。

珍しい。子供アピールかしら?


湯船にうっとりしていると、レッフェルがやって来た。


「あら?フォルケッタは?」

「フォルはお風呂が苦手なんですよ」

「そう言えば、前にも言っていたわね……ふふ」

「シャワーだけ済ませて上がってしまいました」


レッフェルがすぐ隣に入ってきた。

ちょっと恥ずかしい。

入浴用のタオルは巻いているけれど、

その下は素肌だもの……。


ちらっとレッフェルに視線をやると、

向こうもこちらを見ていて、目が合った。


「な、何かしら……」

「めありさん……最近、マカロン食べてます?」

「あっ……」


すっかり忘れていた。

前回食べたのは、半日以上前だ。

もしかして、いやもしかしなくても、

無意識のうちにアレが出ていたかもしれない。


「ごめんなさい、直ぐに……」

「待ってください」


湯船から上がろうとしたら腕を掴まれた。

その反動でレッフェルに倒れ込む。


「貴女は無防備過ぎます……少し、自覚して下さいね」


何時に無く真面目なトーンのレッフェル。

掴まれた腕を引き寄せられ、手の甲に唇を落とされた。


「今後はちゃんと時間に食べれるように、僕がめありさんのスケジュールを管理しますね」




そうだ。

彼女が他の誰かに取られては困る。


最初に出会った時、魅了効果のせいかもしれないが、

一目見て彼女を好きになってしまった。

後にそういった不思議な能力を持っていると知って、

この好意は作られたものなのだと思った。


しかし、彼女がマカロンを食べ始めてからも、

彼女を見ていると愛しく思えて、

何があっても必ず守りたいと感じていた。


そして、イズムルートで貴女を失いかけた時。

たった数分の出来事だったのに、

まるでこの世の終わりのような喪失感に苛まれたのは

未だ記憶に新しく、鮮明に覚えている。


酷く後悔した。

二度と貴女から目を離したくないと思った。


そして、宿屋の部屋でフォルの話を聞いた時、

はっきりと自覚してしまった。

彼は自分の感情に気が付いてないが、

恐らく彼も……彼女に好意を抱いている。

それを知って、貴女を誰にも渡したくないと感じた。


見苦しい独占欲だと思いますか。

皆が褒めるような、王子様では無いんです。

怖い……この気持ちを拒否されるのではないか、と。


だから、今はまだ隠しておきますね。

そして影から、誰にも貴女を奪われないように、

僕が裏でこっそり手を回せばいいんです。


貴女に気付かれないように……そっと、そっと。

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