3-6
まずは一旦整理だ。
私が飛ばされた先の異世界、
様々な人種の人間が暮らすアルカデア。
一見平和そうに見えるが、
私が来る前までは同じ毎日を繰り返していた。
そこに私が迷い込んでから、
アルカデアの時間は進み始める。
そしてアルカデアの正体は、
天王という天界の王が夢見ている夢そのもの。
天王は産まれてからずっと眠り続け、
世界を保っている。
しかし、問題があった。
アルカデアの日常生活に無くてはならない“魔法”。
それは言い伝えでは、
人間は皆、天王からの祝福を
受けているから使えるのだと、そう伝わっていた。
だが実際は、
魔界ヴァリオンに住まう魔王が生成するエーテルを
体内に取り込んだ影響で魔法の使用が可能になる。
結果として人間は、
魔王から得た魔法の技術を磨き、
魔法の生みの親である魔王を滅ぼさんとしている。
……非常に滑稽である。
人間が魔王を目の敵にするのには理由があった。
アルカデアのエーテルが飽和した時に生まれる魔族、
彼らは人間に敵意を抱き、襲い掛かる。
魔王や、魔族の上位にあたる
オリジナルの命令とは別で、人々に襲いかかるのだ。
故に、魔族の頂点である魔王の討滅が望まれている。
元々オリジナルは、まだこの世界が無かった頃に、
これから生まれるであろう各魔族の統制を図るために、
魔王の肉体の一部を元にして作り出されたものだ。
つまり、魔王とオリジナル達は夢の外にいた。
そしてこの目で見た世界の仕組み。
アルカデアの……夢の外側からは、世界に干渉できない。
そこでマスカレドは確かめた。
私を目撃していた植物種魔族の目を通して、
私の姿を把握していたクリフォトをアルカデアに忍ばせた。
己の魔力を消し、魔族であることを偽り、
アルカデアに住まう人種に扮する。
するとどうだろう、何事もなく干渉ができる。
私やアルカデアの住人であるレッフェル、
フォルケッタと共に過ごし互いを認識しても、
物語は滞りなく進んでいく。
隙をついて、私を攫うほんの一瞬だけ魔力を滲ませた。
天王は反応しきれなかった。
恐らく天王は、夢の全域を見渡してはいるが、
一人一人を細かく観察は出来ていない。
結局、この物語の主人公は私だ。
私を失ったアルカデアはページが捲られないまま。
つまり、時が止まっている。
ならば、カンタレラの時空転移魔法は?
……アルカデアの別の時間軸に転移できるだけで、
本体そのものの時間を弄ることは出来ないそうだ。
別の時間軸に転移した場合、物語がスキップする事になる。
何かしらの不具合が生じる可能性が高い。
結果として何を成すべきかをまとめると、
①主人公だと思われる私がアルカデアに戻ること
②同行させるオリジナルを選別すること
そしてこれは自分自身の問題だが、
何より……思い出さなくてはならない。
魔王と呼ばれる彼のことを。
家族?それとも、友達だった……?




