表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェアリーテイルオブシーヴ  作者: unique
【Ⅱ】イズムルート王国
16/58

2-8

「気をつけてくださいね。魔法を使えるようになったとは言え、彼女にはまだ属性がありませんから‥‥」


イズムルートでの依頼を全て片付けたレッフェル達は、

ダークエルフの国、

グラナティスを目指すことになった。


メインはグラナティス国王からの直接の依頼だが、

結局あの後一度も遭遇しなかったセフィロトが

グラナティスに戻れたのかの確認も兼ねている。


私はある程度の魔法が使えるようになった。

初級の基礎魔法に加え、己の身を守るバリアーや

下級魔族となら張り合える程度の攻撃魔法。


私にはまだ属性が無かったので、

無属性以上の魔法は覚えることが出来なかった。


「大丈夫ですよ。僕達がついていますから」

「あのあの、やっぱりもう行っちゃうの‥‥?私、もっと貴女と色んなところにお出かけしたかったなぁ‥‥」

「なんか女王様とあんたやけに打ち解けてない?」

「うふふ、秘密よ」


クロイツの胸が顔に‥‥。

彼女がべそをかきながら私にしがみついているのが

なんだか微笑ましくて笑ってしまった。


グラナティスはイズムルートから近い。

ただし、道は極めて険しい。


グラナティスは数ある国の中でも、

もっとも過酷な環境の国。

不安定な岩山の所々からマグマが噴出し、

火山灰舞うその地は、気温変化も激しいそうだ。

屈強なダークエルフの戦士は、

自然に鍛えられて成長するのだと言う。


因みに、エルフやダークエルフ以外にも

ヒトと呼ばれる種族はいる。

エーデルシュタイン国王のレックスは

ヒューマンと言う、

ごく普通の人間の姿をした種族だ。

(エーデルシュタインはヒューマンの国だが、

世界一大きな国なので様々な種族が混雑している)

他にもいくつかの種族があるらしい。


私は見た目がヒューマンに一番近いと言われたので、

以後ヒューマンを名乗ることにした。


「では、行ってまいります」

「あ‥‥お待ち下さい。少し、そこの彼女にお伝えしたいことがあります‥‥席を外していただけますか」

「わかりました。では後ほど‥‥」


クロイツの指示で、

レッフェルとフォルケッタは姿を消した。

目の前の彼女はふわりと

聖母のような微笑みを満面に湛えている。


「ふふ、何か欲しいものがあるのでしょう?物欲しそうな目でわたしを見ていたよね」

「‥‥“白百合”と呼ばれる刻印をご存知かしら」


一瞬、クロイツは目を見開いてフリーズした。

やはり不躾だったかしら‥‥。

しかしクロイツは元の穏やかな表情に戻り、

にこりと微笑んだ。


「そう‥‥ですか。レックスから白百合を貰ったんですね?ええ、勿論。わたくしも貴女に白百合を捧げたいと思っていました」

(急に喋り方が戻った‥‥やっぱり)

「レックスの白百合は‥‥ああ、もう消えているではありませんか‥‥!本来白百合は“消える前に更新”しなくてはなりません‥‥」

「えっ‥‥でもセフィロトは、“消えた頃に”申し出ろって‥‥」



「そーだよ‥‥俺が君を攫えるように、そう伝えた」



ぶわっと視界一面の花びらが当たりを舞う。

今、今‥‥セフィロトの声がした。


「この悍ましい程の魔力‥‥貴方は、上級の‥‥否、それ以上の魔族ですね?」

「天族の質問に答える義理は無いかなあ」

「くっ‥‥貴様‥‥!」


魔法と魔法がぶつかり合う。

渦巻く炎、荒ぶ水、轟く風、揺らぐ大地、

その全てが花びらの壁にぶつけられるが、

一瞬空いた風穴も直ぐに塞がってしまう。


「やはりヒトごときの肉体では‥‥!」

「‥‥君たちのさ、そういう見下す態度。大嫌い」


冷たい声だ。

あの泣き虫なセフィロトとは思えない。


騒ぎを嗅ぎつけたレッフェルとフォルケッタが

花びらの隙間から見えた。

焦ったような表情で2人が剣を抜く。

叫ぼうにも、びっしりと体に張り付いた花びらで

思うように体が動かない。


ごめんなさい、私、迷惑かけてばかりね。

むしろこのまま、2人の前から消えてしまえば。

2人は楽になれるのかもしれないわ。


だんだんと視界が狭まり、何も聞こえなくなって、

そのまま私の意識は途切れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ