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幕間8(ジャンヌの想い6)

 1939年9月に第二次世界大戦が勃発し、夫のユーグは准将として、新しく創設された歩兵師団の師団長として出征し、長男のアランは陸軍少尉として歩兵小隊長となり、出征して行った。

 かつてを想い起こし、フランス陸軍の病院の雑役婦の1人としてでも働きたい、という想いを私もしないでもないが、それは色々な意味で無理な話だ。


 アラン以外の私のお腹を痛めた子ども11人の面倒を私は見る必要がある。

(正直に言って、まさか私がユーグとの間に産んだ子ども、12人全員が、無事に成長できる、とは私は思わなかった。

 この時代だから、何人かは夭折すると私(とユーグ)は思っていたのだ。

 そして、ユーグは私の身体と技に半ば溺れ続けた。

 また、ユーグは私と同じカトリックに改宗し、お互いに避妊しなかった。

 それらが組み合わさった結果、12人もの子宝に私達は恵まれたのだ。

 なお、貞節の教えはどこに行った?と言われそうだが、(私も暗黙の裡に同意していたが)ユーグは、妻の忠子とカトリックに則った結婚をしていないし、離婚に応じてくれないからだ、と小理屈をこねていた)


 それに、アランの妻カトリーヌとその連れ子ピエールの存在がある。

 ユーグはスペイン政府等に掛け合って、きちんとカトリーヌの前夫ピエールの戦死に伴う弔慰金等を確保してくれたが、幼子を抱えた新妻が二人だけで暮らせる訳が無く、アランが出征したことから、その二人を気に掛ける必要も私には生じてしまった。

 そして、家族の面倒を見るのに私が追われている内に、ちょっとした事件が起きてしまった。


 第二次世界大戦勃発に伴い、日本海兵隊は先の大戦と同様に欧州に赴いてきた。

 その中に、ユーグの実子、野村総司と、娘婿、土方勇がいたのだ。

 その二人は共謀して、ユーグに暴行を加えた。

 所詮は親子喧嘩であり、日仏間では内々にしましょう、ということで話がついたのだが。

 英米等にその話が伝わるうちに、内容が少なからず変わり、日本海兵隊の尉官が、フランス陸軍の将官に暴行を加えたのに、日本は公式の謝罪を拒否しているという話になってしまった。


 その話を聞いて憤ったアランは、士官学校の同期生らを扇動して、日本海兵隊襲撃を画策するし。

 また、英米の本国政府まで、それはどうなのか、と日本政府に忠告するし、という大騒動になった。

 最終的に、日本遣欧総軍総司令官たる北白川宮成久王大将が、遣欧総軍高級参謀を務める土方歳一大佐(言うまでもないが、土方勇の実父)を、フランス陸軍総司令部に公式に派遣して、謝罪するという半ばパフォーマンスをして話が収まった。


(なお、アランは納得せずに総司と会って、最終的に兄弟喧嘩を肉弾でしたらしい。

 アランはサバットで、総司は柔術で戦い、両者共に最終的にノックアウト状態になったらしいが。

 よくそこまでお互いに派手な喧嘩をしたものだ、と私は呆れてしまう。

 なお、こっちの方はお互いに酒を飲んでおり、酒の上でのトラブルという事で、内々の話は付いた。

 二人合わせてワインを5本飲んだ末、口ではすまず、肉弾戦になったらしいが、よくそこまでお互いにワインが飲めて、肉弾戦までできたものだ)

 

 私はその顛末を聞いて思った。

 たかが親子喧嘩、されど親子喧嘩。

 更にそれが原因で、兄弟喧嘩になり、また、国際問題にまでなるなんて。


 全く困った親子、と周囲に印象付けられてしまったのではないだろうか。

 本当に困ったものだ。

 かといって、私は口を挟めない。

 私が原因の一端を担っているのは、全くの事実だからだ。

 

 取りあえずは、お互いに、更に周囲にも話がついて、和解が出来た、ということで収めざるを得ないが。

 ユーグの親子喧嘩がここまでの問題になるとは。 

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