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小学校入学式位からのことを振り返ってみた。

作者: 赤手錬

「しね、消えろ、どっかいけ、邪魔だ。」

こんなことを言われて許せるだろうか。

僕自身、こんなことを言われる理由は思いつかない。なんだというのだろうか。

「僕が何したって言うんよ。」

やってしまった。言っても無駄だというのに、つい怒鳴ってしまった。

「分からんがか。だからこんなことしとんがやぞ。」

何を言っているのか、まったくわからない。僕のどこに問題があったというのか―――






 僕は小学生だった。入学するとき、新しい環境に、期待で胸を高鳴らせていた。しかし、その期待は2週間で裏切られることとなった。

 その小学校は、入学する児童のほとんどが地区の保育所からの持ち上がりだ。例年別の地区の施設から入学してくる人はいないが、僕の年だけ珍しく三人もそのような人がいた。

 僕は入学式前の待ち時間に教室で、初めて会うその子たちのうちの一人と話した。その子は緊張していたのか人見知りなのか、僕の話にうなずくばかりで、何も返してくれなかった。仮に@くんとしよう。@くんは僕の名前と、漢字は異なるが同音のようだ。話をしているうちに入学式に呼ばれた。入学式の間、これからの生活に希望を感じ、明日また会うのが楽しみだな、などと思った。入学式の後は各自保護者に付き添ってもらって下校した。

 翌日、@くんは教室に現れなかった。僕はその事実に、@くんは緊張で疲れて風邪でもひいたのだと思った。だが、そこから1週間、一度も顔を見ることはなかった。

 2週間目に突入してすぐに特殊学級の存在を知り、僕は愕然とした。なぜだ、彼になにか問題があったのか。おかしな様子はなかった、なんでそんなことになっているんだ、と。しかし、誰もそんなこと気にもとめず、先生も特に何を言うでもない。僕は暇なとき、@くんの顔を見に特殊学級に足を運ぶようになった。


その時から、僕はクラスにとって都合のいい生贄とされたのだった。


菌が移る、触るな。

気持ち悪い、キモイ、キモイ。

余計なことしてんじゃねえよ。お前もう関わんな。


 小学生は、集まると残酷にして狡猾な生き物になるのだと、当時を振り返って思う。

 僕は確かにみんなと違うことをしていた。しかしながら、それがいじめの原因になるとは思っていなかった。友達だって、@くん以外にも間違いなくちゃんと確かにいるはずだった。この時点で3年以上ともに保育所を過ごした幼馴染たちが学年1クラスの9割を占めているのだから、その事実を疑うはずもなかった。そんな僕の考えとは裏腹に、周りの人たちはみな、僕が失敗したなら蔑み、成功は妬み、近づくだけで怒鳴られ、ものを借りたい時にだけ都合よくすり寄って、貸し与えたなら使用後に壊し、貸さなかったなら人でなし外道などと罵声を浴びせかけてくるようになった。そして初めは@くん関連で攻撃されていたのが、僕の失敗をあげつらわれるうち、いつのまにやら僕自身がいじめられる程度の人間でしかないという認識にすり替わっていった。


 成長してからいじめ関連の本を読むようになり、この程度で済んだ自分はまだ不幸ではなかったのだと思える。が、当時は自分の生きている世界がすべて。自分より不幸な人間はいないと考えていた。


 入学して最初の2週が過ぎ、なぜ攻撃され続けるのか疑問に思った僕は担任に相談した。担任は30代後半の優しそうな女性の先生だった。僕の母親も教員だったからその先生について聞いたが、周りの信頼も厚いベテラン教師だった。


 結論だけ言うなら、まったくの無駄だった。それどころか、さらにエスカレートしていき、逆効果だったとさえ言えた。

 この時から、僕はすべて自分で解決しようと、解決できなくても自分の中だけで抱え込もうと

決意した。これが間違いだった。ここから僕にとっての、7年にわたる長い冬が始まる。

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