大銅貨になるにはどれくらい時間がかかりますか?
ここに来てついにテンプレの面倒な絡みが来たのか?と思いながらなんて言われるのだろう、と男の返事を待つ。さっきからテンプレに期待しているような言い方をして入るが、もし殴りかかられでもしたら勝てる気がしないので、出来ればテンプレじゃないことを願いたい。俺がそんなことを考えているといきなり男が俺の方へズカズカと歩いてきた。そして、俺の肩に手を置くと…
「なんて素晴らしい服なんだ!」
「え?」
予想外の言葉に思わず素っ頓狂な声を出す。何をされるのかと思ったらまさかの服の話である。ちなみに今着ている服は制服である。
「この服を触って確信した。この服は素晴らしい!」
ああ、服の触り心地を知りたくて肩に手を置いたのか。いきなり厳つい男に肩に手を置かれたら怖いじゃないか。やめてくれよ、などと思いながら返事を返す。
「それはどうも…」
「この服はどこで手に入れたんだ?」
どこで、か。どう答えたらいいのだろうか?と困っていると相手がどうやらなにか納得したように頷き始めた。
「確かにこんな素晴らしい服の入手法など言いたくないよな、すまない」
「い、いえ」
なんか、見た目に反してとてもいい人そうだ。と、丁度そこに受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました」
受付嬢が戻ってきたのに気づいた男はじゃあ、またなという言葉を残して去っていった。
「クロウズさんと仲が良かったんですか?」
クロウズさんって絶対今の人だよな、名前からして。
「いえ、初めて話しました」
「そうだったんですか」
そういった後、受付嬢は少しの間何かを準備していた。そして、それが終わったのか受付の上にひとつのカードらしきものを置いた。
「それでは説明を始めますね。このカードは冒険者カードと言って、自分の冒険者ランクを始め、ステータス、犯罪歴など様々なものが表示されます。そして、今のあなたのランクは一番下である銅です。ランクの種類ははお金の種類と同じで、お金の価値が高ければ高いほど、ランクは上へとなります」
一通りの説明を終えたのか、質問はありますか?と尋ねられる。何も無いかな?と思ったが、ひとつ聞くことがあった。
「この近くにあるダンジョンに入りたいんですけど、可能ですかね?」
「ダンジョンですか…ダンジョンは大銅貨になるから入ることが出来るので、今は無理ですね」
え、無理なの?まさかのダンジョン入れないの?どうしようか。魔石をどうやって手に入れようか。そう言えば、ダンジョンって、大銅貨になれば入れるんだよな?今更だけど、店で買えないのか?
〘魔力を貯めることの出来る魔石(蓄魔石)は発見されておらず、店での購入は不可能です〙
そうだったのか。仕方ない、大銅貨に頑張って上がるしかないか。よし、そうと決まれば早速依頼を受けるか。
というか、アシュリーさんにすぐ帰ると思う、と言ったがすぐに帰れなさそうだな。
俺は大銅貨ランクに上がるにはどのくらい時間がかかるのだろう?と思うのだった。