初期設定おかしくないですか?
俺の危機回避の能力が作動していないのではと疑っていると、何か情報が頭に流れて来た。その内容は
危機回避能力は使用するときはon、使用しないときはoffにしないといけないらしく、初期設定はoffになっている
というものだった。なぜ初期設定がoffなんだよ、と思いつつも文句を言っても仕方がないので危機回避能力をonにしておく。よし、これで俺の近くで危険が起こることはなくなっただろう。面倒なことになることもなくなった。そう考えると気持ちが楽だな。と俺が少しだけ喜んでいるとアシュリーさんが声をかけてきた。
「ご飯ができたんですけど、食べますか?」
今はそんな時間なのか。因みに昼食である。
「頂いてもいいですか?」
「はい!」
「それではお言葉に甘えて…」
俺はそう言って椅子に座る。俺を見に来てくれた男性も座っているので一緒に食べるのだろう。
「いただきます」
いつも通りに食べ始めたが、何故か二人が俺の方をじっと見ている。
「いただきます、とはなんですか?」
なるほど。この世界にはいただきますという言葉がないのか。
「俺の国での食事をする前の挨拶です。癖ですので気にしないでください」
「そうだったんですか」
と、会話は一旦終了しアシュリーさんの手料理を食べ始める。それは日本の料理に比べると少し薄味だが、とても美味しいものだった。
「ごちそうさまでした」
「それも挨拶ですか?」
「はい」
今度は男性からの質問を肯定する。さて、体も元気になりお腹も膨れた。この後はどうしようか?勿論異世界に来たのだから適当に旅をしたり、冒険者になったりするつもりだ。だが、色々お世話になったアシュリーさんと俺のために来てくれた男性にお礼をしなくてはならない。お礼といってもお金が無いからな、出来ることは限られる。よし、取り敢えず本人に直接なにか聞いてみよう。
「アシュリーさんと…」
「ラインです」
そう言えば全然名前知らなかったな。
「ラインさん、なにか今欲しいものとかってありますか?」
「欲しいものですか」
「僕は魔力かな、なんて」
「魔力ですか?」
「僕は回復魔法で村の皆を治療しているんだけど、魔力がそこまで多くなくてすぐに枯渇しちゃうんだよ」
なるほど、だから魔力が欲しいということか。確かに魔力があれば村の皆を治療できて、一日に稼げる治療費も増える。一石二鳥だな。だが、魔力与えるなんで出来るのだろうか?と考えているとまたも頭に何かが流れてきた。簡単に纏めると魔力を与えるのは無理だが、魔力を蓄えられる魔石があるということだ。これを使えば何ができそうだな…。
というか、この流れてくる情報はどこから来ているのだろうか?と思うのだった。