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8話 仮ダンジョンを設置してみる……愛のムチと言う名の奇襲を受ける

大陸名がバラバラだったので、訂正


キアラのダンジョンは、ミースヘイムにある

エリックが死んだのは、レムドヘイムのダンジョン

 キアラが様子を見に来た。ミナはいないようだ。

「さぁ、馬鹿者たちのエリックとヴァンはどこだ? 変なことをせずに、大人しく本を………………なんで、触手で絡まり合った上に、無言なんだよ……」


 う~ん、説明しようにも、初見のこの状態は誤解を免れないよな。

 触手と触手を絡めて、1つの寒天ゼリーのように2つのスライムがくっついた姿だからな。


「……いや、誤解だよ? 疚しいことは何もしていない。二人で、俺たちの可能性を拡げていたんだ」

「お姉さま、ヴァンはスゴいんです。いろんなことを知っているんです」


 どんな可能性だよ! いろんなことって何だよ!

 誤解するよな、これ。

 汚物を見るような……いや、汚物を見る目を向けるキアラ。


「いや、何も言わなくていいのよ。あなたたち2人をそのままにして、予想の斜め上のことが起こっても驚かないようにはしていたから。言いたいことは、早く自分のダンジョンを作って、私のダンジョンを汚さないでほしいってことだけよ」


 汚物処理の方向性まで決めたようだ。

 しょうがないな。何を言っても聞く耳は持たないようなので、好きなことを言えると思うようにしよう。


「俺も早くモンスターを美女にしたいな。この世界の常識もエリックから仕入れたから、攻略者もメロメロにできるぜ」

「お姉さま、僕はまだまだお姉さまから学びたいです。お姉さまの攻撃には品があり、僕の目指すべき攻撃がそこにあるのです」


 その言い回しは完璧だな。

 その攻撃ってのは実践したい攻撃ではなく、実感したい攻撃って意味で目指すんだろう。

 傍から見れば、相棒の言う「品」はかなり「下品」だな。


 分かるか、キアラ?

 この変態っぷりなんだから、俺と相棒の差を作るなよ?

 前世を見させてもらったが、相棒もかなりの切れ者の上に馬鹿なんだぜ。

 今の言い回しが動かぬ証拠だよ。


 §§§§§§§§§§§§§§§


 移動しながら、情報交換をできる事実と証拠を見せて、誤解を解こうとする。が、「ハイハイ、本当にそうだとしても、あなたたちに期待してもね」と、評価は変わりそうになかった。


 そうこうするうちに、ダンジョン内にある草原と森の隣り合うフィールドに案内される。

「ここに今から仮のダンジョンを作ってもらうわ。それぞれのダンジョンにモンスターを誘い込んで、そのDPを得ることが目的よ。まずは、ダンジョンマスターのみが持つ力を見てわかるようにする」


 あれは、昨日のモンスター配合をするときに見た仕草だ。

 空中に向けて、何かを操作するようなキアラ。

「私に続いて。〈ダンジョンコア現出〉」




 キアラの前に、直径20㎝程の半透明の珠が浮かぶ。


 バレーボール? 晩白柚? 程の大きさ、キアラの髪のように赤と青の光が交互に明滅している。


「〈ダンジョンコア現出〉」

「〈ダンジョンコア現出〉」


 キアラに続いた俺達の前には、緑色に明滅する珠が浮かぶ。

 何となく分かる。これは、俺の命の一部だ。


「触っても問題ないわよ。そうそう簡単に壊れるもんじゃないから。どうすればいいかは、直感的にわかるはずよ」


 促すキアラに従い、ダンジョンコアに触れる。

 その瞬間、俺を中心にダンジョンコアから立体的なホログラムが現れる。

 あ、そういうことか、立体的なウインドウ方式か。


「わかったかしら? じゃあ、あなたたちのフィールドを確認してみて。《森》じゃないかしら? その操作ホログラムは他人には見えないから、ちゃんと確認してね。自分のダンジョンは、自分のフィールドに近い環境にしか設置できないのよ。つまり、あなたたちは《森》の中かその近くね」


 キアラからは俺のホログラムは確認できてないようだな。

 ……だけど、俺からは相棒の操作ホログラムが見えちゃってんだよな。

 相棒も確実に見えている様子だ。


「確かに《森》だ。だが、俺たちは相互に相手のホログラムが見えるようだぜ? 普通は見えないんだろ?」


()()はね。たぶん、双子だからでしょう。それよりも、この辺は《平地》と《森》の境界線だから、あなたたちの仮ダンジョンを作れるわよね? 早くホログラムを操作して、設置してみなさい」


 怪訝な表情を見せたが、軽くスルーするキアラ。

 まぁ、そんなとこだろうな。

 やはり、俺たちにあまり興味はないらしい。


「後で私がモンスターを配合するから、自分のダンジョンで仕留めなさい。食べてもいいし、ダンジョンに吸収しても必ずDPにはなるからね」


 キアラに急かされる俺たちは、ホログラムから仮ダンジョンを作成するように操作する。

「お、エリックはそっちにするのか。じゃあ、俺はこっちにしてみよう」

 相棒の前には、大きなウロがある大木が現れる。

 俺の前には、通路のように藪を塀にした獣道が現れた。


 なかなか趣があるな。

 ダンジョンコアを収めて、それぞれのダンジョンの入り口を見る。

 獣道は、藪や木で奥が見えづらくなっているが、上手く周りの風景に溶け込んでいる。

 藪で作られた塀に沿って獣道を進むと、鬱蒼と茂った森の中になった。

 ここまで来ると、外からの見た目との違い、別空間であることに気付くな。

 それに、ダンジョンマスターだからだろうな、感覚的にいろいろとダンジョンをイジれそうなことが分かる。

 ただ、今は止めておこう。

 勝手に弄くって、キアラに焼かれるのは勘弁だからな。


 大人しく何もせずにダンジョンから出ると、キアラも相棒もいない。

 相棒のダンジョンの中だろうか。


 ウロの中は暗くなっていて、あまり見えない。

 しかし、中に入っていくと、ウロの壁に生えている苔やキノコが仄かに光っている。

 アバタ○みたいだな、あれ好きだったんだよな……あんなダンジョンもできるんだろうか?

 ウロの中を進み、ウロの洞穴のような場所を抜けると、俺のダンジョンと同じ様に鬱蒼と茂る森の中に出る。

 そこで、キアラにいろいろと聞いている相棒がいる。


「ありがとうございます、お姉さま。こうやれば、中でモンスターを仕留めやすい状況を作れるのですね」


「仮ダンジョンだから、あまりイジれないし、広さとかはこのままだけどね。お、ヴァンもこっちに来たみたいだね。自分のダンジョンを組み替えたりしなかったの?」


 エリックを背にして、俺に向き直るキアラ。


「ああ、オイタはしてないよ、姉御」


 肩を落とし、軽くため息をつくキアラ。

 疑問に思い、弾みながら軽い調子で返す俺。

「どうした、姉御? 褒めてくれよ、学んだ俺を」


「いやぁ、絶対にいろいろとイジるだろうと思ってたのよ。だから、時間が経ったらモンスターをあなたに仕向けるように設定していたのに……残念ね」


 だから、どっちも残念そうに見るな。

 特に相棒。俺にとってそれはご褒美ではないんだ。


「それはご丁寧にどうも! っていうか、イジってもよいのか?」


「まぁ、そうね。そこまでできることもないし。問題があるとすれば、DPを無駄にするぐらいかしら」


「無駄にはしたくないから、やっぱりそのままこっちに来て正解だったな。本当に意地がワリィな」


「愛のムチなのよ。じゃあ、DPの説明をするから、こちらに来なさい」


 キアラたちの方に行こうとしたところで、相棒が叫ぶ。

「後ろ! 避けて、ヴァン!」


 間一髪で、身体を平坦にしてホーンボアの刃を避ける。

 キアラたちに意識を集中してしまって、後ろに意識がなかった。

 全方位を見れるのは強みなのに……これは気をつけないとな。


 俺が避けたホーンボアは、既に昨日と同じように相棒が纏わり付いている。

 余裕を見せる相棒は、纏わり付いたままキアラに聞く。

「お姉さま、愛のムチは僕が受けてしまって良かったでしょうか?」


「エリック、愛のムチと分かっているなら、ヴァンに声を掛けちゃいけないでしょう?」


 キアラに、愛のムチと注意をもらった相棒は嬉しそうだ。


「ありがとうな、エリック。しかし、()()()意地がワリィな」


()()()()よ、ヴァン。その証拠に、意識が逸れるとスライムなのに後ろが見えてなかったことに気づいたでしょう?」


 ぐうの音も出ない切り返しに、唸る俺。

 口から鼻先に纏わり付き、ホーンボアを仕留めた相棒。


「ダンジョンに吸収できるかしら、エリック? まぁ、そのまま食べてもいいけどね」


 事切れたホーンボアから離れた相棒は、ダンジョンコアを出す。

 ダンジョンコアを操作すると、ホーンボアがダンジョンの床にそのまま溶けるように吸い込まれていく。

 これが、ダンジョンの吸収か。


 頷くキアラ、見入る俺たち。

「そうそう、今の吸収されている感覚を覚えなさいよ、エリック。実は、ダンジョンコアを出さずとも吸収はできるんだけど、操作を通して感覚を覚えないと、結局は上手く出来ないんだ」


「食べてもDPにできるんだよな? 何か違いがあるのか、姉御?」


 疑問に呈する俺に、同意する相棒。

「う~ん、私は食べてのDP化はほとんどしないからわからないけど、基本的に違わないはずよ。結局、自分か自分のダンジョンに、モンスターや攻略者を引き込めばDPになるのよ。だから、ダンジョンマスターによっては、他のDP化の手段を持っていることもあるわ。いろいろと試すのは好きでしょう?」


 容量を得ない答えを返したキアラが、柏手を打つ。

「ハイっ、ではダンジョンに戻りなさい。今からモンスターを誘引するモンスター、《テンプラント》をそれぞれのダンジョンに入れる。そいつに誘引されるモンスターを狩りなさい。また、一定時間ごとにモンスターを配合するから、モンスターが多すぎたり、狩りを終えたければ、《テンプラント》を狩ればいいわ」


 それならば、効率的に狩れそうだ。

 納得する俺に、笑顔を向けるキアラ。

「ヴァン、急ぎなさい。狩りやすい環境を整えなければいけないわよ。知らなかったの? 私はスパルタなのよ?」


 それ、知ってる……

 傍から見ればキレイな笑顔なんだろうが、今の俺には邪悪な笑みにしか見えない。


 相棒のダンジョンを出るところで、一輪のキレイな花を鉢植えに咲かせたようなモンスターとすれ違う。

 敵意はないけど、異様に気になる存在感がある。

 俺のダンジョンにも入っていくので、たぶん、これが《テンプラント》なんだろう。


 そう思い、自分のダンジョンに入ろうとすると、俺の後ろで空間が捩れ始めた。

 これはスパルタじゃない! イジメって言うんだ!



 獣道途中で、鉢植え……テンプラントを担いで、急いで自分のダンジョンに戻る。

 鉢植えをダンジョンの奥に飾り、体制を整えると同時にスプリングスネークが突っ込んでくる。


 そんなこったろうと予測していた俺は、スプリングスネークの初撃に合わせて纏わり付き、溶解していく。

 わざわざ素早く気づきにくいモンスターを俺に向けることぐらい、少し考えりゃあ分かる。

 キアラのやりそうなことだ。


 消化しながら、ダンジョンコアを操作して、環境をイジっていく。

 確かに、いろいろとイジれるが、その幅は狭い。

 DPが必要な変化も入れると、幅広い変化もできそうだが、まだ止めておこうか。


 軽く息を吐き、気合を入れる。

「よし、いっちょ、スパルタという名のイジメを乗り切って行こうか!」





 後書き

 ホログラムのイメージは、「マイノリティ○リポート」です。


 イメージが勝手に頭に浮かぶ物より、直感的に整理された情報が一覧できるような形です。

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