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91 ゴーレムクイズ

「はぁっ?ゴーレムクイズ?」


 警戒して戦闘態勢をとる俺達とは対照的に、眼前に立ちはだかるロボットのようなこの黄色系のゴーレムはどこかノリノリな雰囲気である。


「お前、一体何なんだ?」


「ワタシはマシンゴーレムです。おお、ユウシャよ。よくぞマイった。マチクタビレました。イマからクイズをハジめます。アーユーレディ?」


 マシンゴーレムという名前からしてロボットなのかゴーレムなのかも定かではない。台詞の全てにツッコミたくなるが、そんな事などお構いなしにゴーレムは話を進めていく。


「ではダイイチモン。ニュウモンヘンです。パンはパンでもタべられないパンは?」


 勝手に進めるな!そう思いながらも俺達はド定番のナゾナゾが出題されたことに安堵していた。

 そんな中、真っ先に一人の男の声が空間内に響いた。クレイだ。


「俺に任せろ。ふん、こんなもの楽勝だ。何なら全て答えてやってもいいぞ?」


 大岩の解除に一役貢献し、少々天狗になっているクレイが自信に満ちた表情で一歩前に出る。


「答えは………パンツだ!」


 クレイの答えに室内の温度が一気に下がった。いや、雰囲気だけでなく物理的にも。


「ブブー、フセイカイです。ワタシはパンツもタべられます。バツとしてヒョウテンカまでキオンがサがります。」


「寒っ!クレイ、てめぇ。あんな問題、間違えてんじゃねーよ!馬鹿なのか!?」


「やっぱりクレイはこの程度。安心した。」


 散々に罵倒され、クレイは明らかにいじけた様子だった。俺が慌てて「フライパン」と答えると、正解だったようで冷気は消えていった。


 キリも良いので、ひとまず俺はゴーレムに疑問点をぶつけてみる。


「ゴーレム、これって何問あるの? あと、クリアしたら何があるの?」


 ゴーレムの目が俺の方を向いた。クリアした先に俺の記憶があるのだろうか。胸の鼓動が速くなる。


「………ではダイニモン。」


「無視かよっ!」


 完全に無視された。今俺の方を見たのは何だったんだよ。一瞬間があった事に悪意を感じる。


 少し哀しくなりながらも、俺は第二問に耳を傾けた。



「ショキュウヘンです。リッパリッパとイわれて、いつもフミツケられているモノは?コンカイはマチガえるとデンリュウがナガれます。」


「おいおい、こいつも楽勝だなっ!」


 ガディウスが余裕の笑みを浮かべ、鼻で笑うように言った。もはや嫌な予感しかしない。


「小国マルゾネスの王だろ?あいつは踏まれるのが好きって話だからなぁ。」


(いや、誰だよそれ!絶対違うだろ。)


 そう思ったが時すでに遅く、眼前のゴーレムの目が光っていた。


「ブブー、フセイカーイ。デンリュウがナガれます。」


「「アギャギャーーッ!」」


 部屋一帯に電流が流れ、全員が痛い思いをしながらも「スリッパ」と答えることでどうにか第二問も突破に至った。


「っかしいな。合ってるはずだぜぇ?」


「ガディウス、貴様少し黙っていろ。」


 セフィリアに睨み付けられたガディウスは敢えなく撃沈してしまった。

 仲間に足を引っ張られつつも俺達は難易度の低さに安心していた。


「ダイサンモン。チュウキュウヘンデス。オナじモノをミているはずなのに、ミるヒトによってチガうモノは?」


「中級編で少し難易度が上がりましたね。」


 セフィリアの言う通り、たしかに先程とは違うようだ。


「ちなみにコンカイはハリジゴクのケイをヨウイしています。」


 いつのまにやら命懸けのクイズになっていた。一応答えは思いついているので皆に確認をとり、ゴーレムに答える。


「答えは、鏡だ!」


「………チッ、セイカイです。ツギにいきます。」


 舌打ちして悪態をつくゴーレムに、やるせなさを感じる。


「ダイヨンモン。ここからはジョウキュウヘンです。10ニンのコドモがカクレンボをしています。5ニンをミつけました。ノコりはナンニン?マチガえるとヒバシラがハッセイします。」


「これで上級編ですか。容易いですね。こんなの5人に──」

「違う、4人だっ!」


 セフィリアの誤った答えにゴーレムが反応する前に、俺は正答を答えた。


「オシイ!セイカイです。」


 この一言で、このゴーレムの性格はひん曲がっていると確信した。


「すみません。危うく間違うところでした。」


「皆の命が懸かっていますからね。慎重に答えていきましょう。」


 それからも引っかけ問題やら難問やらが出題されたが、俺達はどうにかクリアしていった。そして、次が十問目である。


「ツギがサイシュウモンダイです。ナンイドはハメツキュウとなります。なお、フセイカイのバアイ、このホシのカクへコウゲキをオコナい、このホシをバクハツさせます。」


 最終問題という言葉にようやくかとホッとしたのも束の間、ゴーレムが言った台詞に一同耳を疑った。


「今………なんて?」


「お、おいおい。何言ってんだ、こいつ?ついに壊れちまったのか?んな事できるわけねぇだろっ!」


 何を馬鹿な、と苦笑する俺達の足元が青白く輝き始める。


「これは、魔法陣かっ!?」


「たぶんこれが罰を発生させていたのね。………ッ!!これ、相当マズイわよッ!?」


 光り始めたのは床だけではなかった。壁や天井のあらゆる箇所に小型の魔法陣やら何か幾何学的な模様が浮かび上がっている。


「凄い………こんなの見たことない。まさか、この部屋自体が魔法陣なのか?」


 クリシュトフは眼前を埋め尽くす異様な光景に開いた口が塞がらない。だがそれは、この場にいる誰もが同じだった。


「立体魔法陣よ。それに魔法陣がいくつも組み込まれていて互いに干渉し合う複層魔法陣にもなっているみたい。これなら確かに星の破壊も実現可能ね。」


「ルー、本当なのか?………なんでこんなものが。」


「もしかするとじゃが、これに気が付いた先人が封印を施したのかもしれんのぉ。」


 長老の声は呟くように小さかったが、誰の耳にも届いた。


(あの大岩の意味はそれかっ!この魔法陣を封じるためにあったのか!!)


 誰もがそう思っただろうが、気づいた所でもうどうにもならない。それに、記憶の欠片があるのなら避けては通れない道なのかもしれない。


「モンダイ。ゴーレムクイズのサキにはナニがあるでしょう?」


 静寂が場を包み込む。

 なんと言えばよいか、誰もが言葉を無くしていた。

 それはそうだろう。それを知るためにここに来たと言っても過言ではないのだから。


「ダメだ。全く分かんないぞ!このままじゃ本当に世界が終わってしまう。………ルー、何か分かるか?」


「うーん、今回はさっきまでとはまるで違うわ。ちゃんと解けるようにできてるんなら、答えに行き着くはずよね?………だとすれば、最終問題だし、今までのクイズがヒントになっているのかしら。」


 ルーは自信無さげにそう答えた。ここまでのクイズを思い返してみる。

 しかし、問題の傾向や答えに類似点、関連性などがないか調べてみても、これといって何の繋がりも見出だせなかった。


「コンカイはタイムリミットをモウけてみました。ホウゲキカイシまでノコリ5フンです。」


 考えている間にも発動の準備段階なのか、魔法陣は光を増していた。室内を覆い尽くすその青白い光りは、どこかで神秘的でありながらも宙を浮かび始めた石片によって滅びの時を感じさせる。


(こんなの繋がりも何もない、ただのクイズじゃないか!意味なんてあるのか!?この先に何があるかだって?こっちが聞きたいっての!それが分かるなら誰も苦労してねぇよ。………ん!?ちょっと待てよ?)


 一瞬何かが脳裏を過った気がした。


「どうしたの?………もしかして何か閃いたのっ!?」


「いや、正解か分かんないし、自信もない。それ以前にこれが答えだったらちょっとへこむ。」


 ルーの期待の眼差しとは裏腹に、辿り着いた俺の答えは全く確信が持てるものではなかった。しかし、このゴーレムの性格の悪さからするとこの答えもあり得るかもしれないとは思える。


「ちょっと確認だけど、ゴーレムを倒したり、魔法陣の発動を止めることはできないのか?」


「無理みたい。魔力が流れる前なら魔法陣破壊もできたかもしれないけど、たぶんあのゴーレムが対処するでしょうね。それにあのゴーレム、あれ自体が膨大な魔力を秘めた爆弾みたいなものだわ。魔力眼で見てみたら分かるはずよ。」


 俺は魔力眼を発動させ、ゴーレムを見る。体内の中心部には原子炉でもあるのかと言いたくなるような強い魔力反応が存在していた。

 それが何か分からなくても、危険だという事だけは理解可能なレベルだった。




「もう時間はない。皆、この答えでいいか?」


 皆に最終確認をとる。

 逃げる手段はない。立ち向かうしかない。全員の視線が俺に向き、縦に頷く事でその返事とした。


 俺は最終問題に答えるべく、巨大なゴーレムの前に立った。

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