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66 謎多き少女

明けましておめでとうございます。これからもよろしくです♪

「アーサーは私を見捨てる?このままじゃ私またお腹すく。そしたらアーサー、後悔する。私を連れてくとアーサー、安心する。オールオッケー。」


 クーデリカは俺の反応を窺うように、上目遣いをしながらブイサインをした。


「クーデリカ。後悔するのは君だけだし、安心するのも君だけだと思うよ?それ以前に君とは旅の目的地も違うだろうし、なにより俺達の旅は命の危険を伴う。やめた方がいい。」


 こんな見ず知らずの子を連れて行ける訳がない。


「大丈夫。旅は適当。それにすでに死にかけた。空腹という名の魔物によって。」


「ははは………そう。」


 どこか勝ち誇った顔のクーデリカに苦笑を浮かべていると、ルーが腕を引っ張ってきた。どうやら作戦会議のようだ。クーデリカを背にし、三人で円陣を組む。


「どうせ言っても聞かなそうだし、連れていって一度魔物と戦って危険な目に会えば諦めるんじゃない?」


「そうですね。あのくらいの年齢なら魔物と戦えないでしょうし。ここまでは商人の馬車か何かを乗り継いで旅をしてきたのでしょう。」


「んじゃ、その作戦で行くか!」


 円陣を解き、クーデリカを向き直る。


「分かった。俺達と一緒に行こうか。でも危険がいっぱいだから、怖くなったり、クーデリカを連れていくのは無理と判断したらそこでお別れするからな。それでいいか?」


「いい。アーサー、よろしくお願いする。」


 クーデリカはお辞儀をした。言うことは突拍子もないけど、意外と礼儀正しいんだよな。良いとこのお嬢様だったりするのだろうか。


「私はセフィリアです。クーデリカ、よろしくお願いします。」


「世界遺産認定美少女、ルーテシアよ。崇めてもいいわよ?」


「よろしく。」


 クーデリカは礼をしつつ、赤い瞳でルーテシアの顔をじっと見つめた。金髪と銀髪、赤い瞳と青い瞳。こうしてみると不思議と対照的に見えてくる。


「あら、そんなに見つめて何かしら?」


 何か言いたいことがあるのか、クーデリカにルーは問いかけてみる。


「………私は宇宙遺産認定美少女。だから私の勝ち。」


 ふふん、腕を組みドヤ顔のクーデリカだった。


「なっ!?ほ、本当は私は万物全事象遺産だもん!だから私の勝ちだし!」


「残念。実は私、神遺産かつ森羅万象遺産。私の方が一歩リードしてる。ルーテシア、諦める。」


「きいぃぃーーー!!なら私は──」


 二人して張り合い始めてしまった。どうやらどちらも負けず嫌いで似た者同士なようだ。


「あはは、ルーとクーデリカはもう仲良くなったのか!」


「仲良くない!勘違いしないでよ!」

「違う。ルーテシアは宿敵と書いてライバル。」


 二人に睨まれてしまった。触らぬ神に祟りなし、薮をつついて蛇出す、というやつだろうか。それを見たセフィリアは隣でクスクス笑っていた。


 結局、二人のバトルはルーが「高次元異次元異世界歪曲空間超越級神認定美少女」と言ったところで、クーデリカの興味が通りすがりの焼鳥の屋台に向かい、ルーの勝利で幕引きとなった。哀れなくらい何とも言えない勝利だった。


 それから俺達は宿へと向かった。



「クーデリカ、紹介するね。こっちがノアで、こっちがフェイだ。」


「ピキー!」

「キュー!」


 街中でノア達を出すと大騒ぎになるので、宿の部屋で紹介することにしたのだ。


「うん。ノアとフェイ、よろしく。」


 クーデリカは二匹を撫でて挨拶した。


「おや、珍しいな。フェイが初対面の人に撫でられても平気なんて。それにクーデリカは魔物怖くないのか?」


「大丈夫。この子達は優しい子。それに魔物を怖がる意味が分からない。」


「この年だとそんなものなのか?」


 そんな自己紹介をしながら彼女は二匹を撫でくり回し続けた。



「そういえばクーデリカはなんで旅してるんだ?」


 ノア達に昼食をあげながら、そんな事を尋ねた。あてのない旅だとしても旅に出た理由はあるはずなのだから。


「それは言えない。時がくれば自然と分かる………かもしれない。」


「じゃあ、君はどこから来たの?出身は?」


「知らない。気づいたら森の中にいた。それからいろいろと旅してる。」


「つまり言いたくないってことね。」


 核心を避けるようなクーデリカの回答に、ルーはそう解釈していた。


「待て待て、記憶喪失かもしれないぞ?」


「記憶喪失とは何ですか?」


 謎の多い女の子だ。分かっている事といえば、行き倒れ少女で仲間はいない、魔物に動じない、それくらいではなかろうか。

 セフィリアに記憶喪失の説明をしてあげた。


「たしかに。話を聞いた感じだとそうかもしれませんね。彼女の事はこれから様子見が妥当ですね。」


「そうね。意味不明少女なんて、アーサーも本当に面倒なもの拾ったわね!」


「おい、ルー。俺が拾ったわけじゃないぞ?」


「大丈夫。私はルーテシアより正常。もし問題があるならアーサーに面倒みてもらうから、ルーテシアの心配いらない。」


 クーデリカは抱きつくように俺の膝に飛び乗ってきた。そして振り返り、ルーを見ながらニヤリと悪い顔を向けた。それを見たルーはクーデリカを指差し、驚きのあまりアワアワと開いた口が塞がらなくなっていた。


 そんなこんなで謎の金髪少女クーデリカが新たに仲間に加わったのだ。


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