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48 バーボン、ロックで。

 ついにレーダーが北を向いた。示された方向には目的となる人物がいるはずなんだが………。


「あー、まあ、予想通りというか、なんというか。」


「水平線の彼方まで何も見えないですね。」


「仮に島があって、そこに水のアーティファクト持ちがいるんなら、レーダーの距離的にも見えていいはずだもんね。」


 地図を広げ、レーダーが東を向いた地点と北を向いた地点で交差させる。目的地である交点に印をつける。やはりマップ的にも視覚的にも島などは何も無い。俺達は、嫌でも避けていた答えに辿り着くことになった。


「ということで、目的地は海の中………ってことでいいかな?」


「まあ、そうなるわよね。」


 海の中だとすると、どうやっていくのかという問題が発生する。潜水艦なんてないだろうし、魔物もいるはずである。

 先行きに不安しかないが、とりあえず近くの町に向かう。



 やって来た町は、カドカニという町。地面は剥き出しで舗装されているわけでもなく、家も木造が多い。南の大陸はそんな感じの南国的な町が多いのだろうか。


 まずは情報収集ということで、定番である酒場へ向かう。


「いらっしゃい。」


 扉を開けると、マスターであろう中年男性が立っており、無愛想に返事した。まだ昼なので客はいないようだ。

 カウンターに腰掛けた俺はマスターに一言告げる。


「バーボン、ロックで。」


 それを受けて、マスターは顔を歪める。その後、コトッと目の前にグラスが置かれた。


「ちょっ、アーサー。飲めるの?」


「なに昼間っからお酒なんか頼んでるんですか。」


 ルーは俺が酒を頼んだことに驚き、セフィリアはダメな大人でも見るような目でこちらを見ている。


「セフィリアさん、酒場に来たら酒を頼むのは常識です。マナーです。頼まないなんてマスターに失礼です。」


「くっ、分かりました。アーサーは精神的には大人でも体はまだ子供なのですから、私が飲みます!」


 そう言って、俺の前に置かれたグラスを手に取り、一気に流し込んだ。


(おいおい、一気飲みなんてして大丈夫か?)


 俺を心配して代わりに飲んだセフィリアは、バーボンを飲み干すと同時にバタンと背中から倒れてしまった。


「セフィリアさんっ!?一気飲みは危険だからやっちゃダメなの知らないのか?」


「これでも飲ませてやんな。クコルの実の丸薬だ。飲めばアルコールが分解される。」


 マスターはこういう客に慣れているのか、さっと薬を出してくれた。マスターに礼を言って、すぐセフィリアに飲ませると、彼女の顔色はみるみる良くなっていった。一安心ということで、目覚めるまでは隅に寝かせることにした。


「ところでマスター。この北の近海に島なんてありますか?」


「半分あり、半分なしだ。」


「はい?」


 マスターの答えは、俺には全く意味不明だった。質問をちゃんと聞いているのかと疑いそうになる。


「もしかして海中に都市なんてあったりします?」


「あるよ。」


 その答えに俺とルーは顔を見合せる。


「じゃあ、そこへの行き方は?」


「さあな。後は自分たちで調べな。」


 これ以上情報は聞けなさそうだ。しかし、困った時はこういう情報通の人とはコネを作っておきたい。鉄板だ。


 俺はノアに出てきてもらい、虚数空間からアーサー商会特製の小型冷凍庫を取り出してもらう。

 マスターは一瞬驚いた顔をするが、取り乱す事無く落ち着いている。ノアのことを害はないと見抜いたのだろうか。


「これ、氷の魔法石を組み込んだ保存庫です。よかったら情報料だと思って受け取ってください!」


 お金だと味気無いので、この土地柄も考慮しての冷凍庫のチョイスだ。

 魔力を流した冷凍庫を開け、マスターはその機能を理解したようで、すぐに返事をした。


「もらっとくよ。また夜に来な。いろいろ話が聞けるだろう。」


 思いもよらぬ返事だった。この返事はつまり、夜来れば海底都市らしい場所へ行く手段が分かるということなのか?


「では夜また来ます。」


 セフィリアを起こして店を出た俺達は、宿屋を目指して歩き始めた。この町は漁士が多いのか、ところどころ銛や網が置かれた家を見かける。


「コネ作りで冷凍庫プレゼントしてよかったわね。冷凍庫は調整が難しいからウチ以外にはそうそうないものね。これは思わぬ収穫がありそうよ!」


「だな。それにしても、半々って答え………どういう意味だろう。」


「情報収集出来たようですね。どんな話をしたんですか?」


 まだ抜けきっていないのか、セフィリアは頭を押さえつつも経緯を尋ねてきたので、説明する。



「とまあ、そんな感じです。それで、島の有無が半々ってどういうことかって話をしてたんですよ。」


「たぶんそのままの意味だと思うのですが。」


「えっ?」


「そうね。特殊な事情が無ければそのまんまでしょうね。」


 俺は開いた口が塞がらない。ルーもセフィリアも普通に答えが思い当たっているのだから。


「ほら、アーサー!先行くよっ!」


 驚きのあまり足が止まっていた俺は、前を歩く二人を小走りで追いかけた。

この世界にバーボンがあるのはおかしい!という点はノリなので完全スルーでお願いします。

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