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45 いざ、世界へ

「しばらく戻れないかもしれないけど、必ずまた戻ってくるから。ムジナ、今までありがとな。」


「おう。世界旅してくるんなら土産話くらいは持って帰って来いよ!」


「ルーテシアちゃん!女は攻めてなんぼよ!」


「エリー………もっと他に言葉はないの?」


「お兄ちゃんもお姉ちゃん達も、みんなぜーったい元気でかえってきてよっ!」


「私達は強いですから、何の心配もいらないですよ。」


 ムジナ一家には他言無用ということで事情は全て話してある。俺とルーにとってはすでに本当の家族のようなものなので、隠し事をしたくなかったのだ。

 もちろん、最初は世界の危機ということで困惑していたが、俺達の唐突な話に耐性ができつつあるのか、「特にルーテシアならそんな事にも巻き込まれてそうだしな」とどこか悟ったように納得し、激励してくれた。


 俺達は今日、世界へと旅立つ。



 マルタスはさすが貿易の街というだけあって、すぐに旅支度は整った。

 俺とルーが持つ魔法の鞄には様々な道具が詰め込まれ、大きくて入らない物もある程度の大きさならば、ノアの虚数空間に収納されている。そう、あの時は気にしていなかったが、ノアの空間と重力の複合魔法は吸い込むだけでなく吐き出す事もできるのだ。


 アイリの手に乗っていたノアが、定位置となった俺のポケットに入り込み、フェイは白いマフラーのようにセフィリアの首に巻きついている。

 ムジナに餞別としてもらった武器──俺は剣、ルーとセフィリアは短剣──をそれぞれ身に付け、俺達は別れの挨拶をした。


「じゃあ、行ってくるよ!」




 俺達の旅の目的としては、火水風土のアーティファクトを宿す者の確保、世界樹の場所の特定。そして、強くなること、世界を見て回ること、つまりは人生を楽しむ事だ。


「これから向かうのは予定通り、水のアーティファクトを持つ人のとこでいいのか?」


「そうね。一応確認してみましょうか。ノア、お願い。」


 ノアは基本四属性の魔法を覚えてしまっているので、体内のアーティファクトレーダーに自分で四種の魔力を流した。そして、ノアが映し出すレーダーに四色の光点が現れる。


「一番近い火の人は王国の人に任せましょう。次に近いのが水、ちょうどその先に土があるわね。」


「風は移動してますね。こんなに大きく移動するなんて、やはり昨日の予想が当たっていそうですね。」


 昨晩、俺達はどういうルートで行くかを話し合ったのだが、その中で風のアーティファクトだけがよく移動するので、どういう事だろうと話していた。

 セフィリアの言う予想とは、風のアーティファクトを持つ者は『空中都市』と呼ばれる、存在も噂の域の場所にいるのではないか、というものだ。


「でも仮にそんな場所あったとして、そこへはどうやったら行けるんだろうな。」


 空中都市………ファンタジーだとありがちだが、実際行くとなると手段に困る。可能性としては、空を飛ぶか転移魔法陣とかがメジャーどころだったか。


「旅の途中で何か情報があればいいですね。」



 何はともあれ、俺達は水のアーティファクト持ちを目指して歩き出した。といっても、馬車の旅なので、歩き出したのは馬車の馬なんだが。



 ここで、簡単な世界地図を紹介しておこう。というか、詳細なものはこの世界にはないので、簡単にしか言えないのだったりする。世界を股に掛ける商人連中から集めた地図を繋いでできた、アバウトな世界地図だ。

 この世界は中央の海をぐるっと囲むように、東西南北に四つの大陸が存在している。東には帝国があるらしいが、北と南は他種族や小国が多いという話だ。ちなみに、俺達がいるアルハザルド王国は西の大陸に位置している。

 また、中央は全て海なのか、大陸はあるのかについては、海にも魔物がいるので命懸けで調査することになるため、一切が謎に包まれている。


 レーダーは王国から南東の位置を示していた。中央には山脈があるので沿岸に沿うように南下し、南の大陸を目指す。

 魔物を倒しつつ、途中の村に寄り道しながら、南の大陸までもう少し。そんな中、ノアが焦ったように鳴き声をあげた。


「ピッ、ピキーッ!」


「どうした、ノア!敵かっ?」


 ノアはいきなりレーダーを投射し始めた。


「こ、これは………不味いかもですね。」


「ええ、嫌な予感しかしないわね。」


 レーダーの示す方向が南東だったのが、東に変わっていたのだ。

 俺達は示す方角を見る。


「この先って、海………だよな。」

「海ね。」

「海以外見えませんね。」


 そう、東には海が広がっているのだ。


「どうしようか。」


「とりあえず南の大陸を目指しましょう。レーダーが北を向くまでは、まだ中央海域だとは限りませんから。」


「そうね。大陸の一部が海側に出ているのかもしれないしね!皆、ポジティブシンキングよっ!」


「ピキッ!」

「キュー!」


 俺達は位置特定のために地図に印を入れ、再び南の大陸へと歩き始めた。

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