表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/126

42 進化の本質

 ルーは楽しそうに、ノアに魔法を使わせていく。


「ノア、ファイヤーボールよ!」

「ピキー!」


 昨日まで指先程度だった火魔法ファイヤーボールは、一般人レベルであろう野球ボール程の大きさの火の玉を形成していた。


(一晩で苦手克服か~。これ、冗談にならないくらい優秀すぎるんじゃないか?)


 その他の魔法もパワーアップしていた。

 自身の体が少し光っていただけの『ライト』は光の玉を出していたし、昨日は全く発動しなかった爆裂魔法も進化によって魔力量が増加したのか、軽い爆発を起こすくらいの威力で発動していた。


 そして………



「最後は空間魔法ね。」


「ちょっとそれはヤバイんじゃないか?これだけレベルが上がってると変な事になりそうな予感しかしないぞ?」


「大丈夫よ!………たぶん。座標指定とかは技術的な問題だから慣れが必要になってくるのよ。だから進化したからって一晩じゃ変わらないはずよ?よっぽど才能がない限りは、ね。」


 ルー、人はそれをフラグと言うんだよ。知ってて言ってないよね?違うよね?



 ノアが空間魔法を唱えると、前回同様に口の中に謎空間、すなわち虚数空間が開いた。


「ほら、昨日と変わらなかったでしょ?どうせフラグ立っちまったーとか思ってたんでしょう。このアーサーの嫁、ルーテシア様を信用しなさい!」


 何故分かった!?自称嫁はどうやらエスパーらしい。


「とりあえず昨日試した分は全て終わりましたね。ルーテシアさんの言っていた本質とは、魔力量が上がったとか操作が向上したとか、そういう事でしょうか?」


 セフィリアの言葉に、ルーは人差し指を立てて、ちっちっちっと口の前で左右に振った。どこぞの探偵のようだ。


「そんなの一部に過ぎないわ。普通だったらそれだけでも十分凄いんだけどね。」


「全然分かんないぞ?いい加減教えてくれよ!」


「じゃあ、ちょっと待ってて!」


 ルーはノアとひそひそ話をすると、ノアから5メートル程離れた。そして、魔法の鞄からリンゴを一つ取り出した。一体何をするつもりなのか。


「ノア、そこからこのリンゴを口に入れてみて!」


 ルーがそう言うと、ノアは頷き大きく口を開けた。

 離れたものをどうやって食べるつもりなのか。そう考えている内に驚きの光景を目にすることとなった。


 なんと、目の前のリンゴが自らノアの口の中に消えていったのだ。まるで吸い込まれるように。


「え、意味分かんないんだけど。吸い込んだの?でも吸ってる感じじゃなかったし。」


「ノア、次は出してみて。」


 再び大きく口を開けたノアは、今吸い込んだリンゴを口から出した。


「つまりは、そういうことよ!」


「そーゆーことかぁ………って、分かるかっ!説明プリーズプリーズ!」


「ルーテシアさん、私も説明プリーズプリーズでお願いします!」


 俺達が期待通りの反応だったのか、ルーはニタニタしながら説明を始めるのだった。魔法の鞄から取り出した伊達眼鏡をかけて。



「コホン。では、この天才美少女魔法使いのルーテシアさんが教えてあげましょう。耳の穴かっぽじって聞く準備はできたかしら?えー、今回のノアの凄いところは魔法が上手になっているところです。その中で特筆すべき点は?はい、そこの私のアーサー!」


「え、えーと──」

「ブッブー!正解は魔力圧縮ができることです。水魔法で見たように、圧縮することで威力が変わります。ところでセフィリア。ノアが今何をしたか分かりましたか?」


「いいえ。おそらく糸の──」

「残念!ノアは糸なんか吐きません。もう時間かかりそうだから勝手に進めるわね!ノアは口の中に展開した虚数空間を起点に、重力魔法の引力でリンゴを目標にして引き寄せたの。」


「なんかブラックホールみたいだな。」


「さすがアーサーね!私もそれを参考に今のをやらせてみたのよ。でも、今はそこじゃないの。ここで重要なことは、同時に二つの魔法が使用されていること。そして、その二つが混ざっているということよ。」


 俺にはそれが凄いのかよく分からなかった。


「たしか、一人が同時に二つの魔法を使うことはバランスが難しく、片手で別々の作業をするようなものだと聞いたことがあります。」


(なるほど、そういう事か。要は両手にペンを持って別の文字を書くような作業か。でもその、別々の二つが混ざるってどういうことなんだ?火と水とか合わせても混ざるってことか?)


「アーサーは理解不能って顔ね。混ざるってことは反発せずに一つになるってことよ。こんな風に複数で形成された魔法を複合魔法というのよ。」


「なっ!?複合魔法って。それ、一部の魔力系アーティファクトを持つ者が使えることがあるっていう、あの複合魔法ですかっ?」


 セフィリアは驚きのあまりルーへと身を乗り出してきた。ルーは、顔が近いっ、と鬱陶しそうな顔をしている。そして、俺は頭の中を整理中だ。


 要するにだ、ノアが使ったのは重力と空間の複合魔法で、複合魔法は難しいと。そして、セフィリア曰く、その魔法はアーティファクト持ちの一部が使えるような魔法であると。………えっ?


「なにぃ!?ノア、お前目覚めたのか?アーティファクトに!」


 一周巡ってようやく頭に入ってきた俺はノアに迫ろうとするが、後ろ襟を掴まれて待ったをかけられる。


「勘違いしないでね。そんなの無くても出来るのよ。複合魔法を使うには魔力圧縮が必要なだけで、二種類の魔力を圧縮することで一つの魔法にするのよ。その圧縮ができる人が少ないだけの話なの。」


 つまり、ノアの進化の本質ってのはまさか………


「今回のノアの進化の本質は、魔力圧縮。そこから派生する複合魔法。そして、大局的に見れば、魔法特化型進化を選択した、ということよ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ