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36 エルフのお姉さん

 翌朝、俺達は朝食を食べた後、ギルドへと来ていた。


「エロフお姉……エルフお姉さん、お久し振りですっ!」


「………あなた、それわざと言ってるでしょ。」


 受付嬢エレナさんの視線が痛い。


(露出も何も全くない制服の受付嬢に無意識のうちにそんな事を言ってしまうなんて………くっ、これがエルフの魅力なのかっ!?相変わらず恐ろしいぜ。)


 そんな俺の心の声が聞こえているのか、エレナは一つ溜め息を吐きながら、他の面々に挨拶した。


「ルーテシアちゃん久しぶりね!元気だったかしら?あら?そちらの女性は見ない顔ね。新規の登録者を連れてきてくれたのかしら?」


 セフィリアは意を決した顔でエレナに話しかける。


「セフィリアと言います。冒険者登録したいのですが。」


「はい、でしたらこちらを読んだ上でご記入お願いします。」


 エレナはセフィリアに用紙を渡した。普段通りの丁寧な対応だ。


「エレナに大事な頼みがあるの。セフィリアはあっちで受付してもらって。」


 そう言ってルーは自分達を別室へ案内するよう促した。疑問顔のエレナだったが快く応じてくれた。


「エレナはアーティファクト大好き人間よね?それも気持ち悪いくらいに。」


「えぇ、そうよ!異論ないわ!!」


 胸を張り、きっぱり迷いなく肯定するエレナ。聞く側もアレだが、それを全肯定ってのもどうなんだ?


「じゃあさ、極秘のお手伝い、したくない?アーティファクト関連のお仕事よ?もしバラしたら日の当たる社会では生きていけなくなるけどね。」


(おいっ!それ、どんな罰則与えるつもりだよっ!?)


 俺は心の中で静かにツッコミを入れる。


「仕事はどんな内容なの?って、それ聞いた時点でもう後戻りできないわよね?まぁ当然やるんだけど。むしろ、よくぞ私を指名してくれたわ!」


「流っ石エレナねっ!話が早くて助かるわ。」


(えぇ~。エレナさん、もう少し悩まなくていいのか?あぁ、この人すでにダメ人間………いや、ダメエルフだからいいのか。)


 即決即断のエレナに内心苦笑しつつ俺達は固い握手を交わし、ついで誓約を交わした。罰則については小声だったので聞こえなかったが、エレナの顔が尖った耳の先まで赤面したとだけ言っておこう。気になるな~、寝顔写真公開とかだろうか?


 ちなみにルー曰く、実は他の人でも出来る内容なのだが彼女を選んだ一番の理由は、彼女がチョロいからだった。アーティファクトの事となると、危ない橋も笑顔で踏み越えてくれる。現にこれが二度目の誓約である。

 そして、敵にレーダーの情報が渡らない為にも、これは秘匿しなければならない。つまり、漏れない事が第一条件なのだ。


 ルーがエレナにこれから行う内容についての説明をする。その説明によると、アーティファクトレーダーはアーティファクトを鑑定する魔法とマナに関する応用技術を用いるらしいが、俺には全然理解不能な内容だった。


(天才についていけるマニアなんて、エレナさん、もう歴とした変態だよな~。うん、知ってたけど。)



 そこへ、冒険者登録を済ませたセフィリアがやって来た。俺がここまでの経緯を簡単に説明すると、彼女は何かが引っかかった顔をした。そして、


「アーティファクトマニア、エルフ、ギルド………エルフお姉……さん?………あぁっ!!」


 急に大声を上げたセフィリアに皆が顔を上げた。


「あの時のお姉さん………ですか?ほら、以前王都で『絶対領域』を扱いきれずにいた私を励ましてくれたじゃないですか!」


「絶対領域………ということは、あなた、セフィリア・グローシャーねっ!あー………うん、大きくなった、わね?元気そうでなによりよ!」


 セフィリアは涙を溢しながら感謝の言葉を伝えている。昔よっぽどお世話になったのだろう。それに対して、エレナは顔を引きつらせながら当たり障りないようにセフィリアに話を合わせていた。


(あー、たぶんこの人、アーティファクト名と所持者名が一致してるだけだわ。全然思い出せてなさそうだな。セフィリアさん、可哀想に。)


 両者の間にある温度差に若干セフィリアに同情を覚えつつ、これからどうしようかと考える。


「ルー達はこれから始めるんだろ?何か手伝うことある?」


「うーん、材料はたぶんアーサーカンパニーにあるし、今のところ特に無いかな?」

 

「じゃあ、セフィリアさんとアレやっててもいいかな?することもないしさ!」


「えぇー、ダメだよっ!私もやりたいもんっ!これが完成するまでぜーーったいにやっちゃダメだからねっ!待っててよっ!」


 ルーの気持ちも分からんではないが………仕方ない、ここは我慢して依頼でも受けるか。


「分かったよ。じゃあ待ってるから早めに頼むなっ!俺はその間に依頼でも受けてくるかな~。セフィリアさんも行きますか?」


「はい!これが初依頼ですね!」


「ピキキー!」


 気合いの入ったセフィリアの声と共に、俺のポケットからノアが顔を覗かせて鳴き声を上げた。頑張るぞと言っているみたいだ。

 ポケットに入っていたノアを見て、エレナはブーーッと吹き出してあわあわしている。とりあえず面倒なので無視した。ルーが説明しといてくれるだろう。


 俺達は部屋を出て、ギルドの依頼掲示板へと戻っていった。

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