34 帰還の旅
アーサー、ルーテシア、ノアの一行は王都で数日を過ごしていた。セフィリアはというと、当然だが隊長として聖騎士の仕事に従事している。
王都は首都なだけあって、人種もお店も様々なものが揃っている。リアルなウサ耳や尻尾を持つ獣人もいた。初めて見る獣人の尻尾の付け根が気になり、目で追っているアーサーが変態と間違えられる一幕もありつつ、買い物や喫茶店など、王都観光を楽しんでいた。
そして、出発当日。
ショルダーバッグを各々一つずつ持った俺達は王城の門にいた。荷物が少ないと思われるだろうが、なんと高級マジックバッグを入手したのだ!王家御用達である!
………自腹だけどね。………所持金ごっそり持ってかれたけどね。
「この日本的な城ともお別れか。外見だけだけど。」
「そうね。アーサーの世界とはまるで違うもんね。」
屋根の天辺には金のシャチホコが両サイドに輝いている。………いや、あれは海老型モンスターか。
(やっぱこの城、最後まで理解不能だわ。)
数日世話になった王城に別れを告げ、街の門へと向かう俺達。そんな俺達を後ろから走ってくる一人の女性が呼び止めた。
「どうしたんですか、セフィリアさん?もしかして何か新情報ですか?」
「えぇ、ビッグニュースです!私、聖騎士やめてきました!退職願い叩きつけてきました!しっかりバッチリ根なし草です!これでいつでも一緒ですよ。不束者ですが、これからもよろしくお願いしますね!」
「………はっ?………はいぃーーーっ!??」
いやいや、本当に不束者がいるじゃないですか。マジで馬鹿なの?そんな事して大丈夫なの?変な事にならなければいいが。
「えっと、王国的には大丈夫なんですか?」
「ええ、副隊長に全て引き継がせました。この日の為にしごいてきましたので!」
なんだか顔も知らない副隊長さんが目に浮かぶ。ファイトだ、副隊長殿!どうやらこの人はもう手遅れみたいです。
そして、ルーは溜め息を吐きながらセフィリアを見た。
「せっかくの国家プロジェクトなんだから、どうせなら予言対策局所属特殊任務担当とかにしてもらえばよかったのに。給金も出るでしょうに。まったく、勿体無いことするわね。そんな事で世の中生きていけると思ってるの!?働かざる者食うべからずよっ!!」
「あっ………しまったぁーーっ!!」
ルーの鋭い指摘でセフィリアは己の選択ミスに気づいたようだ。頭を抱えている。
「出戻りみたいな事も面倒臭いから、このまま行きましょう。」
「………そうだな。」
俺達は再び仲間に迎えたセフィリアを引きずって、マルタスへ向かうべく王都の門をくぐった。
王都を出て30分後の平原にて。
「マルタスまでまた一月近く旅するのって結構大変だよな。前世だったら車とか電車で楽チン移動だったから、軽くカルチャーショックだよ。」
俺は前世の快適生活が懐かしくなっていた。現在は荷物もないので小型の馬車で移動中である。
「あー、車ってあの動く箱よね?たしかに便利そうだったわ!うーん、じゃあアレいっちゃう?」
(おやおや?ルーさんや、まさか作っちゃったのかい?)
馬車を停め、ルーは外に出るとおもむろに手を前に突き出した。すると、伸ばした手の前方に魔力が収束していく。
「我と彼の地を繋げ!『ゲート』発動っ!」
目の前にはどこかで見たようなドアが一つ立っていた。平原にドアが一つ………うん、かなーり違和感がある。いや、むしろ違和感しかない。
「ルーえもん、これは一体何なの?」
「どこでもいけないドア~!本当は知ってる場所を繋げる門なんだけど、アレンジしてみたの!アーサーの世界では人類の夢だったでしょ?」
ルーはニッシッシと口角を上げながら説明する。セフィリアは、おぉ~、と感動しているようだ。
「これは空間魔法の中でも希少な転移魔法ではないですか?さすがです、ルーテシアさん!握手しましょう!」
ルーの手を取りブンブン振り回すセフィリア。そこへ沈黙を破ったノアの突っ込みが後頭部に入る。死角からの突然の攻撃に、セフィリアはキョロキョロしている。よし、これから彼女の突っ込み役はノアにしよう。そうしよう。
「これからも仲間としてやっていくんですから、暴走は控えてくださいね!でないと、………そろそろ行こうか!」
「そうね!早くアイリ達にも会いたいしねっ!」
「ピピッピキー!」
「えっ、でないと~の続きは何なのですか!?ち、ちょっと、皆さん?ストップストーップ!」
俺達は馬を動かしてゲートをくぐるのだった。
*****
王都ショッピング編
「ルーのやつ、遅いなぁ。どこまで買い物行ったんだ?」
俺とノアはルーの買い物待ちである。予定の時間になっても来ないので、少し探してみることにした。
(服屋さんかな~)
「ピキーッ!ピキピキ!」
店の外から見て回っていると、どうやらノアが見つけたようだ。ノアが指さす方を見てみる。
(んんっ!?この店は!)
店内のルーは黒い線状の下着を持っていた。下着ってゆーか、それもうヒモじゃん!!店内に入り、声をかける。
「ルー、お前、まさかそんなのを………」
まさかの俺の登場にビクンとなったルーは顔を紅くし、必死に否定した。
「ち、ち、ち、違うわよ!私がそ、そんなえっちなのつけるわけないじゃない!これはー………エリーに買うのよ!こっちはアイリのなんだからっ!」
アイリにと選んだらしき物は白と薄緑の縞模様のヒモパンだった。
(いやいや、アイリはまだ7歳だぞ!最近の子はそんな感じなのか?にしても、エリーさんがあんなのを………ムフフ)
「そ、そうなんだ。べつにルーが着てても似合うと思うよ。じゃあ、俺達は外いるから。」
そして、ルーを残した店内。
「店員さんっ!ヒモ系全部持ってきてーっ!早くっ!!」
ルーが店を出てきたのはさらにその1時間後だった。
最後は本当はあとがきに書きたかったんですが、欄が狭くて書きにくかったので本文に書きました。これからもそうなるかもですが、ご了承を~!




