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31 予言

「運命神の巫女………私は耳にしたこともありませんが。有名なのでしょうか?」


 セフィリアは少しの間自らの記憶を探るが、そのような人物に心当たりはなかった。王はルーに視線で問いかけるも、ルーは首を横に振ることでその返事とした。


「………そうか。普通であれば、運命神の巫女と言われても信用など出来んし、ただの予言を国家が二百年も伝承するなどあり得ん話だろう。」


「つまりは………予言の内容が実際に起こったことがある?」


「その通りです。その起こった出来事というのが、ルーテシア様なのです。予言は四つあり、最初の予言にはこうありました。『魔を司りし少女が誕生し、世界が動き出す』と。」


 王の話では、与太話だと思ったがその予言の裏を取る為、国内に魔法系アーティファクトを持つ者を探索したところ、ルーの存在を確認する結果となった。たしかにその通りとなったが、これだけで予言を完全には信用できない。とりあえずは様子見をする方針となる。


 次の予言には『封印の時が来る』という記述があった。王国にはどのような理由で封印するのかは分からなかったが、その時の到来により理解する事となる。

 それが、ルーによる都市消滅事件、だ。


 予言に従って封印するが、次の予言は『二百年後、封印が解かれる』ということであり、「ここまでは不変の未来である」と告げられていた。


 そして、最後の予言には『その後、世界が終焉に向かう』と記されていたらしい。しかし巫女は予言に反して、「終焉は確定ではない」という言葉を残していた。



 これを受け継いできた歴代アルハザルド王は、終焉をもたらす物が何か、その対処法はあるのか、と模索してきた。それは研究者の仕事として、またギルドの依頼として広く網を張っていた。しかし、虚しくも大きな手掛かりはなしという結果だった。………そう、2年前までは。


 冒険者が持ち帰った情報。解き明かされた碑文。そして、先日の遺跡襲撃事件。今代の王は確信に至った。破滅の神をルーテシアに降ろすこと、それが終焉の始まりなのだと。


「実はその遺跡の襲撃者、マルタスの方角へ向かったらしいのだが、たしかセフィリア達もマルタスにおったのだよな?時期的にも同じくらいだが、それらしい人物はおらんかったか?」


「どのような特徴でしょうか。危険人物は目にしませんでしたが。」


 マルタスには数ヵ月いたが、危険な事件もなかったし、ヤバそうな人物も記憶にない。記憶を掘り起こしていると、恰幅の良い大臣が特徴を告げる。


「今のところ一人は二刀使い、一人は小柄な老人という情報のみですね。ギルドの高ランク冒険者を照会してみましたが、二刀も老人もそれらしい該当者はゼロでした。」


 俺が記憶にある中で腕の立つ該当者は、武術祭で見た老人と少年である。しかし………彼らにそんな雰囲気はなかったし、一人はアレクセイに負けている。該当しないだろう。ルーと目が合うがどうやら同じ答えに行き着いたようだ。

 だが、セフィリアの答えは違った。


「確証は全くありませんが、該当する可能性が一組おります。」


「ふむ、その者は一体?」


「マルタス生誕祭で開かれた武術祭の出場者の中に、かなり強い老人と、小太刀の二刀流の少年がいました。もしかしたら彼らかもしれません。」


 やはりセフィリアも同じ人物が脳裏をよぎったようだ。だが、否定に行き着かなかったのは何故だろう。


「その根拠は?」


「老人は圧倒的強さであり、少年は負けましたが、完全に遊びでした。控え室でドラゴン狩りのガディウスと話しましたが、老人の方はたぶん次元が違うだろうと言っていましたし。そして、なにより………」


 セフィリアは少し言い淀みながらも続ける。


「彼らのマナの流れは、私が見る限り………止まっていました。ですので、異質には感じていました。」


 セフィリアの言を聞いて、周りは皆難しい顔をした。どうやら話についていけてないのは、俺だけのようだ。


「マナが止まってるってどういう事なんですか?」


「アーサーはマナをブースターのように考えているようでしたね。しかし、人は多少なりと周囲からマナを取り込み、循環させて生きているのです。その流れがないということはどういうことでしょうか?」


「死んでいる?」


「正解です。ですが、彼らは動いていました。つまり、生命体でありながら、マナを必要としていない──言い換えれば、生命体ではない。そんな矛盾が起きているわけです。」


 なるほど、マナの見えるセフィリアだからこそ気づけた事実だな。


「分かった。その者達についてはこちらで調べておこう。ところで、何故セフィリア殿が武術祭の控え室におったのだ?よもや、喜び勇んで参加したわけでもあるまいよのぉ?」


「あっ………そ、そんな、滅相もない!」


 大臣の不意を突く言葉に、セフィリアは先の説明で余計な一言を口走った事に気がついた。


「手掛かりがなかったので、何かしらのアクションを起こせば状況も変わるかと………」


 大臣にはバレバレだったようで、彼は深く溜め息をついていた。


「結果的に収穫はあったので良いが………頼みますぞ、隊長殿っ!」


 時間的なこともあり、この場は現状把握のみで終わらせ、宴を開くことになった。対策会議は翌日会議室にて行うようだ。


 俺達は残念セフィリアエンドで謁見の間を後にするのだった。

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