セフィリア・グローシャーの軌跡
私の名はセフィリア・グローシャー。アルハザルド王国聖騎士隊長である。
今より数ヶ月前、王国封印管理局から、世紀の大賢者にして絶世の美少女ルーテシア・バレンタイン様の封印が解かれたという報告が入った。そして私は、彼女の捜索と王城への招待を命じられることとなった。正確には立候補だが。
幼い頃からアーティファクトに目覚めてはいた。しかし、私はマナを操る事に特化したそれを上手く使いこなすことはほとんどできていなかった。『無能の才能』などと周囲からは呼ばれたりもしていた。
そんなある日、変なお姉さんに出会った。耳の長さも変だが、その人は図書館でアーティファクト関連の書物をニヤニヤ読み漁っていた。そんなマニアのような彼女が私に目をつけたのは必然以外の何物でもない。むしろ本命ではなかったのだろうか。
彼女は私の状況を聞くと、こう述べた。
「私は才能だけがその人の全てじゃないと思うの。努力が無駄なんて思わないし、無くてもいろんなことができるわ。そりゃあ上手く使えれば、他の人に出来ない事ができるかもしれないわけだから、それは素晴らしい事だわ!つまり私の言いたいことは、自分を受け入れて成長しなさいって事よ。人生楽しまなきゃ損よ!」
そんな彼女は上司であろう男性に、お前は趣味に生き過ぎだと怒られていた。だがその男性は、こいつの言う通りそれに縛られて生きてもつまらないぞ、と私に微笑んでくれた。ぼやけていた視界が鮮明に開けた気がした。
それからはお姉さんに薦めてもらったアーティファクト事典で、どういった人がどんなアーティファクトを持っていたのかを読み始めた。ただ自分がこれからどうしたいのか、どんな風になりたいのか、そんな事を考えただけの些細な理由だ。
読んでいくうちに一人の少女のことを知った。彼女の持つアーティファクトは『叡知の書』。全ての魔法が使えるらしいが、その詳細は不明という謎のアーティファクト。そんなものを持つ彼女は詳細不明なんて不安しかないだろうに、魔法研究で国の生活基盤を支え、アイドル活動で笑顔を与えていた。
「スゴい!名前はルーテシア・バレンタインかぁ。どんな人だったんだろう。」
私に憧れの人ができた。決して会えない200年前の人。
数年後、私はそんな彼女が愛したであろうこの国を守ることを夢に鍛練を続けた。苦しいときにはお姉さんにもらったルーテシア様を転写した絵を見ながら興奮………いや、奮起した。気がつけば扱いの難しかった自身のアーティファクト『絶対領域』も自然と扱えるようになっていた。
聖騎士になり、隊長として過ごす日々。そんな中、奇跡が起きました。女神降臨です!
今の地位でなければ知り得なかったかもしれない機密事項。実は封印されていたらしい女神様が現代に舞い降りたのです。悶絶以外ありえません!
私は即座に捜索を志願しました。部下にも大臣にも有無を言わせません。人生楽しんだ者勝ちです。
捜索の旅に出た私は、ある街で脱水機なるものが最近流行っていると聞いた。その製造元は様々な新製品を生み出しているらしい。新たな変化があるところには何かあるかもしれない。もともと当てもないので、製造元のあるマルタスを目指すことにした。………別にちょうど武術祭があるからという理由じゃない。
武術祭は有意義な時間だった。危険な輩が二名程いたが、姿を消してしまった。少し苛立たっていたが、なんとここでルーテシア様の情報を得ることになった。情報元は大剣使い。彼に聞いた家に向かうが留守だった。
「近い、近いぞーーっ!!」
私のアンテナがギンギンに反応している。家に帰る途中の親子に尋ねてみた。少女が答える。
「たぶんアイリちゃんの家だよー。」
「あぁ、鍛治師のムジナさんのところだね。」
親子と別れて高速移動し、家に着く。身だしなみ………オッケー。ドアを叩く。
そのドアの向こうに、まさか喜びと悲しみが同時に待っているとは思ってもみなかった。